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「で、てめぇの足を治療し、
俺に飼われる覚悟は出来たか？」
相変わらず肩で息をしているAは、もう吸血への欲求が限界のようだった。
飢餓状態っていうのがどれくらいツラいものなのかは分からないが、
かなり辛いのだろう、というのはその様子から見て取れた。足に弾丸を残したまま平然と歩き続けていたAが、こうまでして取り乱すなんて。
それにしても。
Aの価値観云々とか、そういったことを全て無しにして。
血を吸いたいという欲求を我慢しながら悲痛に顔を歪めこちらを睨むAは、
まるで警戒心むき出しでふしゃー！と威嚇する野良猫みたいだ。
小さく体を震わせて、目を泳がせている。
柘榴のように赤い瞳も、ぱちりと天井に向かって伸びる睫毛も、俺よりもずっと小さいぷっくりと膨らむ柔らかそうな唇も、赤く上気させた真っ白な肌も。
俺よりも随分と年下のまだガキだろうと思っていたのに、どうしてか惹かれてしまう自分がいる。
本能に逆らえず震えているAを見ると、
嗚呼、本当に可哀想だな、と思う。
だが、可哀想な所すら可愛い、とそう思っている自分が居ることに気付いて、驚いた。
……Aを見てると、
どうにも自分がおかしくなる。
頭を撫でたくなったり＿＿＿＿虐めたくなったり。
「言っとくがこれ以上の高待遇は他にねぇぞ？」
「……ぅ、うぅ、っ」
「なんで吸血鬼の癖に注射器何てものを使っているのかは知らねぇが
俺なら、……安定した
目的を果たす為の手助け、
テメェが活動時間外の面倒も見てやれる。
……そうだな、あとは」
駄目押しだ。
Aを押さえ込んでいる片手はそのままに、
自分のもう片方の手首に、自ら噛み付いた。
「……
噛みついた自分の手首から、ぽたぽたと血が滴り落ちる。鮮やかな赤。
それをAの目の前に、見せつけるように差し出すと、Aがさっきよりも一際大きく目を見開いて、ぶるぶると身体を震わせた。
勿論、決してAの口には入らないよう細心の注意を払って。
流れ落ちた血液が、ぽたりとAの目の前を通って床に落ちる。
目の前でこんなふうに血の匂いを嗅がされて、その上お預けされるAの気持ちは一体どんなだろうな。
何日もメシを抜いた状態で目の前で肉を焼かれるような感じなんだろうか。と想像して、そりゃかなりの地獄だな、と内心ほくそ笑んだ。
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作者名：幸せうさぎ | 作成日時：2023年2月11日 3時
