． ページ13
「行くか？」
「…貴方に、そうする義理は無いでしょう」
Aたちの目的はあくまで、組織とその“幹部”の情報を掴むことのはずだ。
私達は正義のヒーローでも、お助け屋でもなんでもない。ましてやローなんて、海賊だと言っていた。
Aがどれだけこういう商売を憎んでいようと、潰してやりたいと思っていようと、ローとは無関係だ。今犯すべきリスクじゃない。正しく状況を把握して、合理的な判断を下す。何が“最適解”かAは理解していた。
今は手を組んでるだけ。ローを私のエゴに巻
き込むのは、お門違いだ。
「するべき事を、するだけです」
「……そうか」
部屋の中の捜索を続けよう、とローから距離を取ろうとしたその時、
ぐいと腕を引っ張られて、ローの唇がまた、耳元に近づく。ふらついたせいでほんの少し掠めたそれは、一瞬だけど確かに熱を持っていた。
今更、身長差のせいで体を折り曲げてもらわないとAに耳打ちすることも出来ないんだなぁ、なんて関係の無いことを思考する。
「確かにお前の考えは間違っちゃいねぇだろう。だがな」
ぱ、と目の前に紙が差し出される
「別に何も難しい話はしてねぇ。
相手は賞金首だ。狩るかどうかと聞いている。俺も旗揚げしてすぐの身だ。資金は多いに越したことはないからな」
ローさんは差し出された紙のある部分をとん、と指さした。取引後の受取書であろうその紙に書かれていたのは、サイン。
その名前は、確かに懸賞金リストで見た事がある名前だ。
「懸賞金1600万。丁度いい敵じゃねぇか。なぁ、“賞金稼ぎ“の吸血屋」
回りくどい言い方だ、と思った。
本当に辞めて欲しい。こういうのを、有り難迷惑だと言うのだろうか。
少しでも心を許さないで欲しいのに。優しさなんていらないのに。
「じゃ、いくぞ、賞金稼ぎにな」
無言を肯定ととったのか、ローさんはぽん、と私の頭に数度手を置いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 160人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：幸せうさぎ | 作成日時：2023年2月11日 3時
