名を付けるならなんと呼ぶ【ONEPIECE】 (ページ6)

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すっごい睨まれてる。警戒、だろうな。

けど、その青年がいた事によって、Aは思考の材料をかなり手に入れることが出来た。視線を部屋の中で素早く動かし、状況を頭の中で整理する。
なんとか思考をまとめると、やっと声を絞り出す。
それが最善で唯一の手だとAは頭の中で答えを出した。

喉が乾いていたのか、一言目はかすれた息のような声だった。

「……あの、もしかして、助けてくれた……ですか？」

そう声をかけると、男は少しも目線を逸らさずに、でも確かに呼吸を緩めた。
ふぅ、と軽く息を吐く。溜息とも呼吸とも取れないギリギリの塩梅。

「まぁ、そうだな。助けた」と言った。表情は1ミリも変わらないし、言葉の中に優しさは見えない。警戒が緩む様子はなかった。

低く静かな声は随分落ち着いていた。かなり顔は怖いけれど、助けてくれたということは悪い人では無いのだろうか。

……でもまぁヤバい人や人攫いだったら私はこの時点で無事な訳ないだろう。とAは思考した。
大した出自でも無いただの少女を騙す必要なんて無い。
どうこうするつもりなら、意識を失ってる間に自由を奪っておくだろう。
それにAはきちんと自分の怪我の治療がされていたことを覚えていた。

あらゆる可能性は脳内で検討を続けるけれど、そんなことよりも。
とにかく、まず私は言わなければならない事がある。

「……そうですか、えと……ありがとうございます。」

お礼は、人間として生きる上での最低限のマナーだ。