名を付けるならなんと呼ぶ【ONEPIECE】 (ページ46)

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そこからは、5年以上の真っ黒なベタ塗りの記憶。

Aはまだ、あの毎日、痛くて苦しくて辛かった日々を過去にすることも、乗り越えることもできていない。ずっとずっと、その中にいる。

たぶん、必死に与えられた仕事をこなした。出来が悪ければ売り飛ばされるかその場で即死亡。
そこで利用価値があると判断されている間は兎に角生きては居られるのだ。ただ作業のように心を殺す毎日だった。

生きる為に人を殺すことも、戦い方も、自分より体躯の大きな人間を制圧する方法も、
どんな毒がどれだけ痛くてどう苦しいかも、人を不快にさせない話し方も、どの骨が折れたらどう動けなくなるかも、全部全部、そこで覚えた。

寝たくても眠れない日々は、頭の使い方を覚えるのに最適で。能力を得てからは、遠く遠くの音に耳を傾けて、全てを一生懸命頭に叩き込んだ。お陰で1人でする旅に苦労はあまり無かった。

施設を逃げ出した時には歳が2桁になっていて、望んでもいない、海に入る事を許されない体になっていた。

行く宛ても生きる目的も理由もなくて、その時にAは生き別れた兄を探して旅をすると決意した。

今もどこかで首輪を付けて生き地獄を味わっているのならば、助けてあげたい。

縋るものなんて、
何も持っていないAにはそれだけしか無かった。