名を付けるならなんと呼ぶ【ONEPIECE】 (ページ32)

今日:9 hit、昨日:16 hit、合計:61,252 hit

Ⅴ 天狼星はムルジムを隠すページ32

天狼星はムルジムを隠す
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
シリウスはムルジムをかくす

Aの口からジョーカーという単語が飛び出してきた時、俺は声を出して嗤ってしまいそうになるのをこらえるので必死だった。

嗚呼、本当に、こんなことがあるなんてな。

これを“運命”と呼ばずしてなんと呼ぶのだろう。運命なんて信じる質ではもちろん無いが、なんとも因果的だと思ってしまう程には、よくできた話だった。

珀鉛病を想起させるような白い肌に、真っ赤な瞳。気紛れで命を救った年齢にそぐわない話し方をする少女は、俺と同じ組織を追っていた。

どういう経緯(いきさつ)でその組織の名を知ったのだろう。売られた人間の足取りを追ったところで、見える答えはたかが知れている。
危険を犯してまでそれを追うのは、信念か、其れとも自棄なのか。

“手を貸す”とローが言った時、少女は睫毛を数度震わせて、肺に溜まった空気を、なにかと一緒に吐き出すような、そんな呼吸をした。
表情は変わらない。けど、初めて感情らしい感情を出した用にもみえた。

紅茶を飲み下す仕草も、俯いて尚、真っ直ぐ天を見上げている睫毛のゆったりとした動きも、幼い少女には見えない。話せば話す程、幼さとかけ離れていくように見えた。
そんな少女が、緩やかな眼差しのまま吐いた皮肉にも取れる言葉に、やっと歳相応の感情を見出して、何故か安心などしてしまった。