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____…



「コーヒーか紅茶」

「……では紅茶で」



部屋には漂う紅茶の香りと、茶を用意する音だけが響いている。
ピリピリとした緊張感などは無く、穏やかな時間は流れているが、お互いちゃんと最低限の間合いは保っているのが、逆に分かりやすくて気分が良い。

警戒心を抱かせない為にも少女の目の前で紅茶を用意し、ひとつのティーポットを使って2人分の紅茶をいれる。出来上がったカップをトレーにふたつ並べ、わざわざ何方のカップも選べるように彼女に差し出した。

こんな間抜けなタイミングで毒を盛るのは馬鹿のする事だし、お互いの心中をある程度察しあっているこの状況では、ここまでする必要は無いとは分かっている。

だか彼女の素性を知らないのは俺も同じこと。俺の行動をどう受け取られるかは分からない。
だからこれは、大袈裟な『敵意は無い』というポーズだ。

俺の行動をどう受けとったのか、警戒していたのか、彼女の腹の底は解らないが、嫌な顔ひとつすることも無く、少女はありがとうございます、とトレーからカップを受け取り口をつけた。


「簡潔に説明するぞ」

「……助かります。」

俺も同じようにして紅茶をひと口流し込むと、昨晩自分が見た事をそのまま語る。


「昨晩、裏町で銃声を聴いて、お前を見つけた。
テメェは腹を撃ち抜かれてた。弾は貫通。肝臓に穴が空いてた。出血量は多かったがすぐさま死ぬ程ではなかった筈だ。だが、…出血性ショックを起こしていた。
で、意識を失う寸前に『血が飲みたい』とお前が呟いた。それが気になったんでな。言葉の通り、試しに俺の血を飲ませた。」

「……」


言葉を挟むことも無く清聴している少女の顔色を(しか)と確認していたが、変化は見られない。
まるで能面のようだ。そこからはなんの感情も読みとることは出来なかったので、こちらも構わず話し続ける。

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作者名:幸せうさぎ | 作成日時:2023年2月10日 10時

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