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『もしもーし！あれ、ん？誰だろ、……あ、もしかして新入りさん？』
電話口から聞こえたはっきりとした声は、女の人の者。はつらつとした物言い。新入りさん、という呼び方。
あ、そうだ。たしか自己紹介しろって言われてたな。なんて今更思い出した。
「あー、たぶん、そうっす、ハクガンと申します」
『あはは！そんな改まらないで！ハクガン君ね！初めまして！今キャプテンいるー？』
「いや、それが俺以外誰もいなくて」
『あ！そうなんだ！ごめんね急にかかってきて驚いたでしょ。』
「まぁ多少。」
端的で簡潔なやり取りの中、電話越しでも分かる愛想の良さ。初対面の俺に対してもこの砕けたかんじ。あまりの緊張感の無さに拍子抜けしたまま、会話が進んでいく。
『じゃ、ローに伝言頼める？』
ロー、と言われて一瞬首を傾げそうになった。キャプテンのことか。うちの船でキャプテンのことを名前で呼ぶ人居ないからな。
『いま皆のいる島向かってる！夜には着くわ！って言っといて〜！』
夜って、ん？今もう昼過ぎだけど、夜って何時だ？と疑問に思い聞こうとした、が、
『ごめんねー今運転中だからまた後で！ほんじゃ！』
がちゃ。
とたんに、しん、と静まり返った食堂内。
結局名前も聞き忘れた。まぁけどこの電伝虫にかけられるのは1人だけって言ってたし、ここにかかってきたって伝えれば分かるか。
はー、随分朗らかな人だったなぁ、と先程まで話していた声をもう一度思い出す。
電話越しでも何となく表情が分かるような、電伝虫の顔など見なくとも笑顔が伝わる声というのはあるもんだなぁ、なんて思った。
というか、今日の夜、着く？
この島に？？
ポーラータング号の食堂にぽつんと置かれた鳴らない電話が鳴って、連れてきたのは大きな混乱と、騒々しさだった。
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作者名：幸せうさぎ | 作成日時：2023年2月9日 0時
