#22 Palevioletred ページ24
◆
走る、
真っ暗闇の世界の中を、私はひたすら
走っていた。
あたりは暗くて何も見えない、息が上がって苦しい。何度も身体をぶつけて、痛い。
けどそれでも走って逃げることしか出来なかった。
自分の体の上を這った男の手の感触が、忘れられなくて恐怖に震える。もう一度捕まれば、きっと容赦はされないし、もっと酷い暴力も振るわれるだろう。
怖くて、怖くて仕方がなかった。
ぐちゃぐちゃになった髪の毛を振り乱して、叫ぶ。
誰か、たすけて。
◆
「Aッ！！」
自分の悲鳴と、誰かの声で目覚めた。心臓が意味わからないくらいダンダンと強く身体を叩いていて、呼吸も荒くて、体の震えが止まらない。
ひたすら荒く息をしながら、必死に頭の中で記憶を整理する。
「っは、…っは、……ゆめ、……か……」
「……A」
さっきのは夢だ、と頭がようやく理解したあたりで、隣にいるエースの存在に改めて気が付いた。
眉間に皺を寄せて私の顔を覗き込む彼は、随分焦ったような不安そうな顔をしていた。
心配、してくれたのだろうか。
「……えー、す、」
何とか落ち着いてきた呼吸の隙間を縫って、小さく名前を呼ぶと、彼の腕がゆっくりと私に近付いてきて、そっと、本当にそっと、私の肩に触れる。
それは物凄く優しい、砂上をなぞるような手だったのに、
「……っ、っひ」
私は肩を大袈裟にびくりと震わせてしまった。怖かった。まだ夢と現実の区別が曖昧で、
一瞬私に触れて、行き場を無くしたようにさまよった手が元に戻っていく。
「…っ、ちが、うの、ごめんなさい、」
「いい。今のは俺が悪かった。ごめんな」
なんでこんなタイミングで、あんな夢を見たんだろう。忘れたいとどれだけ願っても忘れられない過去の夢。
考えただけで、あの日の恐怖が鮮明に蘇ってくる。目が覚めて落ち着いたはずなのに、また身体が震えだす。刻まれた恐怖の記憶は簡単に私を逃がしてはくれない。
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あゆ(プロフ) - エースと恋に落ちる作品もう一作みたいです;; (2023年2月9日 15時) (
レス) @page38 id: d18f4b6c2a (このIDを非表示/違反報告)
幸せうさぎ(プロフ) - chiさん» コメントありがとうございます！なんとか完結まで持っていけて良かったです…！最後の更新に時間がかかったにも関わらず、見ていただきありがとうございました！！ (2023年2月9日 9時) (レス) id: b10acb6a2f (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - なけた( ´:ω:` )おつかれさまでした (2023年2月6日 18時) (レス) @page37 id: 6cc6324467 (このIDを非表示/違反報告)
幸せうさぎ(プロフ) - ベルモットさん» ベルモットさん。眠り姫シリーズも読んでくださってるんですね…！嬉しいコメント本当にありがとうございます！ (2023年2月6日 18時) (レス) id: b10acb6a2f (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - 眠り姫シリーズから読み始めました。引き続きこの夢小説に行きつきました。シリーズを通し一貫して雰囲気や伝えたいことが似ている部分もあって安心感があります。 (2023年1月30日 11時) (レス) id: 9942db35dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：幸せうさぎ | 作成日時：2023年1月28日 21時
