君との合言葉は (ページ9)

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「英さん」

　そう呼ばれて顔を前に向けると、宮城が目の前にしゃがんでいた。

「宮城」

「お疲れ様です」

　そう言って宮城はいつも持っているマイメロのリュックを漁ってお菓子を取り出した。

「これ、英さんに」

　そう言って宮城はAにお菓子を渡す。Aはそれを受け取ると、ありがとうと言って笑った。すると宮城も嬉しそうに笑ってくれる。

「今休憩中すか？」

「うん」

「横いっていいですか？」

「ええよ、おいで」

　Aがそう言えば、宮城は嬉しそうに笑ってAの横に座った。

「英さん、今日どしたんすか？なんかずーっと休憩も入れんとやってましたけど」

「んー、なんかな、」

　Aはそう呟いて言葉を濁す。宮城はそんなAを不思議そうに見ていた。

「なんかあったんすか？」

「……ん、なんか。裏の方で、俺のせいで空気悪なったみたいな」

「空気？」

「う、ん。なんかそーいちと由伸がバチバチって言うよりか、んー…、表面上やとニコニコしとんのやけどな、」

　Aはそう言って言葉を詰まらせた。宮城はそんなAを心配そうに見つめる。

「なんか、俺のせいで雰囲気悪なって、」

　そう言って俯くと、鮮やかな芝生の色が目に入る。

「英さん、」

　宮城はAの名前を呼ぶ。するとAはゆっくりと顔を上げて宮城の方を見た。

「大丈夫っすよ」

　そう言って笑う宮城を見て、Aは目を見開く。そしてふっと笑みを零した。

「ありがとうな、」

　そう言って微笑むと、宮城も嬉しそうに笑った。その笑顔につられてか、Aも自然と口角が上がる。

「さ、英さん！ご飯行きましょ！今日のメニュー、英さんが好きなパスタっすよ」

「まじ？行くわ」

　Aはそう言って宮城と一緒に立ち上がる。そして、2人並んでグラウンドの出口へと歩き出した。