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選手たちも帰り、誰もいなくなったロッカールーム。着替え終わったAは、緊張した面持ちで座っていた。由伸から何を言われるのだろう。もしかしたら、もしかしたら――
そんな淡い期待ばかりが募ってきた時、足音がして、ギィーと扉が開いた。
「A」
「っ、由伸」
扉が開いて入ってきたのは由伸だった。彼はゆっくりと近づいてくると、Aの隣に座った。
「なんでそんな泣きそうな顔しとんの」
「だって、由伸が……」
「寂しい？俺がメジャー行くの」
由伸は意地悪そうに笑って言った。Aが素直に頷くと、彼はまた笑った。そしてAをぎゅうっと抱きしめる。身長差のせいか、由伸の首元に頭を埋める形になる。彼の香水がAを優しく包み込むようで、少しだけ安心できた。
「由伸……」
「ほんまに可愛い」
由伸はそう言ってAの頭を撫でると、そのまま彼の頬にキスをした。そしてゆっくりと唇を離すと、今度は額やまぶたにも口付けを落とす。まるで恋人のような行為に、Aはただただ顔を赤くすることしかできなかった。
「……っ、」
「A、好きです。大好き。遠距離になるかもしれんけど、俺と恋人になってください」
「っ、」
Aは目を見開いて由伸を見た。ずっと片思いだと思っていた相手が自分のことを好きだったなんて、夢みたいだ。
「……はい」
「………………よかった…………」
ポツリと溢された言葉は、彼の紛れもない本音で。Aの背中に回された手は少しだけ震えていた。
「由伸」
「A、早速やねんけど、渡したいのがある」
「？」
Aが首を傾げると、由伸はポケットから小さな箱を取り出した。そしてそれをゆっくりと開ける。中にはキラキラと光り、Aのイニシャルを模ったネックレスがつけられていた。
「これ、」
「Aにあげる」
「え？」
由伸はそう言うと、Aの首にネックレスをつけた。そして目を細める。
「似合ってる。A」
「っ、」
Aは顔を真っ赤に染めて俯いた。由伸が自分を想って選んでくれたプレゼントに胸が高鳴る。
「ありがとう……嬉しい」
「……よかった。喜んでもらえて」
そう言って笑う由伸の顔は本当に幸せそうで、Aも自然と笑顔になる。すると由伸の顔が近づいてきて、そっと唇が重なった。
「ん……」
2人の初めてのキスは甘くて優しくて、幸せな味がした。
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作者名：usa426 | 作成日時：2023年11月1日 23時
