. ページ32
「Aおかーえり」
「由伸、ただいま」
Aは答えると、グローブを持ってポンポンと軽くボールを転がす。
「A、今度こそキャッチボール一緒にやろ」
「ええよ」
Aはボールを取り出して由伸の方に軽く投げた。
「ナイスボール」
由伸はそう言うと、Aにボールを返す。そしてまた投げ返す。その繰り返しを何度かした後、Aは由伸に上着を返していないことを思い出した。
「あ、上着」
「別にいいのに」
「後で返すわ」
Aはそう言いながら、由伸に向かってボールを投げた。そしてまた投げ返す。そんな2人の様子を颯一郎は遠くから見ていた。
「なんか、Aが由伸と仲良さそうにしてるん見ると、ちょっと嫌やわ」
「嫉妬？」
小木田が聞くと、コクリと少しの頷きが返ってくる。
「まあ、Aはみんなから愛されてるしね」
宇田川の言葉を聞いて颯一郎は壁にもたれてズルズルと座り込んだ。
「あ、宇田川会」
「小木田世代って言ってください」
広報がカメラを構えてこちらにやってきた。どうやら写真撮影をしたいらしい。
「聞いてくださいよ、そーいち、大好きなAが由伸とキャッチボールしてるからって拗ねてるんですよ」
宇田川が言うと、広報は笑いながら
「いいねぇ、若いねえ」
とカメラを構えた。
「いくよー」
カシャッとシャッターを切って、広報はカメラを下ろす。そしてAの方に向かって歩いて行った。Aもそれに気づいたのか、広報に駆け寄る。
「どうしたんすか？」
「由伸とツーショ撮らしてもらっていい？」
「あ、はい」
Aは笑って由伸の方にもたれかかってピースをする。広報はそんなAと由伸をカメラに収めると、颯一郎も呼ぶ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 184人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：usa426 | 作成日時：2023年11月1日 23時
