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それから数十分後に飲み会もお開きとなり、Aは帰ろうとして立ち上がった。
「A、一緒にかーえろ。俺、車で来てるから送ってくで」
由伸がそう言ってAの腕を引く。
「A、俺の方が家近いから一緒にタクシー乗って帰ろ」
颯一郎がそう言ってAの腕を引く。2人の間でAは笑うだけで止めようとしない。しかし彼の目は忙しなく揺れ動いていて、明らかに困っている様子だった。
「そーいちがそんなん言うからA困っとるやん」
「いや、由伸やってAに気つかわすなや」
「えー？」
まただ、とAは思う。また自分のせいで空気がピリついてしまっている。肌にヒリヒリと刺さるような緊張感がして、またあの日みたいになる。他の人に助けを求めようにも、みんな酔っているためか気づいていない。
「あ、や……その……」
Aはなんとか声を絞り出そうとするが、上手く言葉が出てこない。ダメだ、他人に頼らずに自分でどうにかしないと。
「お、れ……1人で帰るから、送ってくれんのは、ありがたいんやけど……」
Aは途切れ途切れにそう言うと、2人に向かって頭を下げた。
「ほんまごめん！俺、1人で帰るわ！」
そう言って逃げるように店から飛び出した。後ろから由伸と颯一郎の声が聞こえたが、無視して走る。とにかく早く1人になりたかった。
「はぁ……」
様々な飲食店の明かりで昼のように明るい道。Aはその中で1人暗い顔をして歩いていた。
「また逃げた……」
Aは呟くと、大きなため息をつく。そして自分の腕を摩った。
「寒い」
いくら夏とはいえ、夜は少し冷える。Aは上着を羽織らずに来たことを後悔した。当てもなく少し歩いたところで足を止める。目の前には自分のことを可愛がってくれる先輩がいた。
「A！Aじゃん！どしたのこんなとこで」
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作者名：usa426 | 作成日時：2023年11月1日 23時
