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スローボールが上手く打たれてしまってワンアウト満塁。ここで打たれてしまうと打たれどころによっては同点に追いつかれてしまう。しかも相手はチームの4番打者だった。
「ストライク!」
相手チームのチャンステーマが鳴り響く中、Aは足で地面を踏みしめてボールを放った。
1球目はインコースにストレート。バッターは見逃したが、そのスピードに合わせようとバットを振っていた。
2球目も同じようにインコースへストレートを投げるが、今度は当てられてファール。
3球目はアウトコース高めへのカーブ。これはバットに当てられてファールになった。
4球目は大きく外れてボールになる。
5球目は少し低めを狙って投げてみたがバットの先に当てられてファール。
そして6球目。
「っ!」
アウトコースのボールゾーンへ投げられたボールを、バッターは思いっきり振った。しかしボールは若月のミットに収められていく。
「ストライク!バッターアウト!」
そのバッターを三振に取る。これでツーアウトだ。あと1人。あと1人でAは初完封勝利を飾れる。
「ら゙ぁっ!」
投げたボールは高々とショートへ上がっていった。そしてそれをしっかり紅林がキャッチすると、Aに手渡してくれた。味方たちとハイタッチをしながらベンチへ戻っていく。途中で監督がハグしてくれた。
「よくやった!」
「ありがとうございます!」
Aは笑顔で答えると、ベンチに座る。するとすぐに若月が声をかけてきた。
「ナイスピッチー!すごいじゃん。初めての先発で完封なんて」
「いやほんまワカさんのリードのおかげっす」
「いやいや、Aが頑張ったから」
若月はそう言って笑う。すると今度は杉本が話しかけてきた。
「おつかれさん!ナイスピッチング!」
「あざす!」
2人に褒められて、Aは照れたように頭をかいた。
ヒーローインタビューが終わったあと、また監督に話しかけられる。
「おめでとう。完封勝利」
「ありがとうございます!」
Aは満面の笑みで答えてベンチ裏へと下がっていく。ベンチ裏に行くと颯一郎が抱きついてきた。
「Aマジですごい!」
「ちょ、痛い痛い!」
「あ、ごめん」
颯一郎は慌ててAから離れる。そして今度は優しく抱きしめてくれた。
「おめでとう」
「ありがとう」
颯一郎のユニフォームからは、柔軟剤のいい香りがした。Aはそんな颯一郎の背中に手を回すと、ぽんぽんと叩いた。
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作者名:usa426 | 作成日時:2023年11月1日 23時