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「アホか！安静にしとけって言われたやろ！勝手に走るな！」
「いででで！すいません！痛いっす！」
Aが監督にヘッドロックをかけられている。その光景を見ながら、山��はため息をついた。
「ま、とにかく元気そうでよかったね」
「そっすね。Aおらんかった時の由伸、見てられなかったっすから」
「Aがいなくなった瞬間、由伸とおんなじくらいパニクってた人がよく言うよ」
「それは言わんでください」
颯一郎が山��の肩を軽く叩く。そして2人で笑い合った。
「A、大丈夫かな」
「大丈夫すよ。監督も言ってたし」
颯一郎がそう言って微笑むと、山��は安心したように笑う。するとそこに由伸がやってきた。
「あれ？Aは？」
「監督に怒られてるよ」
その言葉通り、監督はAの頭をぐりぐりと押さえつけている。しかしすぐに解放されたのか、Aは頭を抑えながらこちらに近づいてきた。
「監督マジでひどいわ、ハゲるかと思った」
「ハゲたAも見たい」
「何言っとんねん。先にそっちからハゲにしたってもええんやぞ」
「ちくちく言葉だ。サチさんこいつヤバいっすよ」
「ヤバくないしな！サチさん、ヤバいんはこっちっす！」
「はいはいどっちもヤバいってことで」
山��はギャンギャンと言い合う2人を置いて守備練習へ向かった。
「っ、やっぱ痛いもんは痛いな……」
練習中で誰もいないロッカールーム。その中で1人、Aは呟いた。チームメイトの前では気丈に振る舞っていても、やはり痛いものは痛い。
「ふぅ……」
Aはため息をつくと、着替え始める。そして荷物を持つとロッカールームを出た。
「英さん。大丈夫なんすか」
「くれ」
そこには紅林が立っていて、Aの荷物を持ってくれる。Aはそんな紅林に礼を言って、そのまま歩き出した。
「割と大丈夫」
「何割すか」
「？」
たまに紅林とは会話が成立しない。Aは首を傾げながらも、紅林の隣を歩いた。
「何割くらいやと思う？」
「60%っすね」
「それは百分率やから割合とちゃうよ？」
「？」
「？」
お互い頭に疑問符を浮かべながら、2人で並んで歩く。すると紅林が口を開いた。
「英さん、だいぶ怪我やばそうっすね」
「そんなことない」
「え？なんでそんなこと言えるんすか」
「言われんかった？全体ミーティングとかで」
「？」
「ん？ちゃうくて。コーチから言われとるはずやで」
「？？」
「……」
「……」
会話が噛み合わない。Aは諦めてそのまま歩き続けた。
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作者名：usa426 | 作成日時：2023年11月1日 23時
