君との合言葉は (ページ19)

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「はぁー……」

　Aは大きなため息をつく。あの後、病院に行って診察してもらったところ、安静を言い渡された。今はそれを報告しに行く最中である。練習中なのか、ワイワイと賑わうダグアウトに監督は座っていた。

「監督」
　
　声をかけるとハッと顔を上げてこちらの方を見た。いつもの冷静な表情は少しだけ崩れている。

「どうやった？」

「折れてはないらしいすけど、数日は安静にしろって」

「どんくらい痛む？」

「息したらちょい痛むくらいっすよ」

　そう言ってAは肩をすくめる。監督はそんなAをじっと見つめて、それから口を開いた。

「1週間抹消な。調整もした方がいいし」

「……決定っすか」

「うん」

　監督は頷いてそう答える。そしてAの頭を軽く撫でた。

「じゃあ今日はゆっくり休んどき」

　そう言って監督は立ち上がる。すると近くにいた山﨑がこちらを見た。

「A。大丈夫？」

「サチさん、由伸は？由伸はどこすか？」

「え？えっと……多分、あっちの方」

　そう言って山﨑が外野の方を指差すなり、Aはそちらに向かって走り出した。

　後ろの方で何かしらを監督と山﨑が言っているが、それすら聞かずにAは由伸の元へと向かう。そしてフェンスに寄りかかって体育座りしている由伸に声をかけた。