君との合言葉は (ページ18)

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第7話ページ18

「Aキャッチボールしよーや」

「すまんな由伸。宮城とやる約束してるから」

「……」

　拗ねたようにそっぽを向いた由伸を見かねたのか、Aは由伸の背中をポンと叩いて宮城の元へ向かった。

「英さん、由伸さんと仲良いっすよね」

「まあ」

「なんでっすか？」

　宮城はボールをキャッチしながら、Aに尋ねる。Aはそんな宮城の投げたボールを受け取ると、首を傾げた。

「なんでやろ……まあでも由伸ってなんか構いたくなるよな」

「あー確かに」

　そう言って2人で笑い合う。するとそこに由伸が近づいてきた。そして無言でボールを奪い取ると、そのまま走り去る。

「あ！こら！」

「……」

　他の投手陣たちが練習しているところをうまく避けながら由伸は走っている。Aはそんな由伸を追いかけた。

「待てって！」

「……」

　由伸は無言で走り続ける。Aは走って追いかけていると、不意にガッと何かに躓いた感覚がした。あ、こける。そう思っても遅い。しかも用具が目の前に迫っていて下手すれば大怪我になる。

　なんとか右手だけは庇わなければ。そう思って右手を後ろに回した瞬間、鈍い痛みが胸に広がった。

「ぐ……」

　ガンッと言う嫌な音が遅れて聞こえてくる。そしてそのままAは倒れ込んでしまった。

「A！」

　近くに居た山﨑が焦ったように駆けつけてくる。由伸はそんな山﨑のことを呆然とした表情で見つめていた。

「はっ…、よし…よしのぶ…」

　必死に酸素を取り込みながら、Aは山﨑に訴える。

「由伸がどうしたの！？トレーナーさん呼んでくるから！
」
「よし…のぶ…ゆ、せん…して…かは、ショック…受けてる……」

「そんなこと気にしてられないでしょ！待ってて！」

「そんなことじゃない…サチ、さ……は、ふ……俺なんかより、由伸のとこ、行ってやってください、」

　そう言ってAは由伸の方を指さす。山﨑は心配そうな顔をしながらも、由伸の方に駆け寄って行った。

「英河、病院いこう。立てる？」

　トレーナーが心配そうにAに尋ねる。しかしAは立ち上がろうとして、その痛みに顔をしかめた。

「無理っぽいか。ちょっとごめんね」

　トレーナーはそう言ってAに肩を貸す。そしてそのままベンチ裏へと消えて行った。