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「ん……んぅ」
数時間後、Aは見知らぬベッドの上で目を覚ました。頭がガンガンして、なんだか気持ち悪い。隣を見ると、そこには気持ちよさそうに眠る颯一郎の姿があった。なんで自分はここにいるのだろうと考えていると後ろから颯一郎の腕が伸びてきて、Aのことを抱きしめた。
「!?何しとんの?!」
「んー?Aのこと抱きしめてる」
「なんで?!」
Aは驚いて声を上げる。しかし颯一郎はそんなAに構わず、さらに強く抱きしめた。そしてそのまま首筋に唇を押し付ける。
「……ちょ、そーいち……」
「なぁに?」
蕩けそうな声でそう囁かれて、背筋がぞくりとした感覚に襲われる。
「A、おはよぉ」
次は颯一郎と向かい合う体勢になって、頬にも唇を押し付けられた。朝なのに潤った柔らかい感触がする。
それに戸惑いながらも、Aはなんとか口を開いた。
「何しと、んの?」
「ん?可愛いなって思って。おはようのチュー」
「……」
「唇のほうがよかった?」
颯一郎はAの薄い唇に自分の唇を押し付ける。少しだけカサついているが、なぜか甘い味がした。
時計の秒針が1、2回鳴った頃だろうか。颯一郎は唇を離してAの目をみて、すぐに自分が何をしたのかを理解した。Aの瞳はゆらゆらと色々なところを行ったり来たりしている。颯一郎は自分の背中に冷や汗が伝うのが分かった。逮捕、嫌われる、A、など色々な言葉が頭の中で跳ね回っている。
「ごめん、A。忘れて」
「っ……ほんま何してんねん」
Aはそう言うと、颯一郎の腕の中から抜け出す。そしてそのまま荷物をまとめると、足早に部屋を出ていった。
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作者名:usa426 | 作成日時:2023年11月1日 23時