第6話 ページ14
「っふー……」
なんとか無失点に抑え、ベンチへ戻る。
「ナイスピッチ」
「ありがとうございます」
若月にそう言われて、Aは軽く頭を下げた。そしてベンチに座って水分補給をする。すると由伸が隣に座ってきた。
「ありがと、A」
「俺はなんもしとらん」
「でも嬉しいから」
そう言って笑う由伸に、Aは微笑んだ。
「英河、次の回も行けるか?」
「行けます」
コーチの問いかけに、Aは迷わず答える。するとコーチは満足そうに頷いて、Aの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「頼むぞ」
「はい」
そう言ってAはまた、マウンドへと上っていった。
「今日のヒーローは、見事リリーフ投手として、勝利投手になりました、英河A選手です!!おめでとうございます!!」
「ありがとうございます」
「まずは6回、どんな気持ちでマウンドに立たれましたか?」
アナウンサーからマイクを向けられる。Aはマイクを受け取ると、
「ランナーが2人いましたが、なんとか抑えようと思ってました」
と答えた。
「そのまま8回まで投げて4安打無失点。素晴らしいピッチングでしたね」
「ありがとうございます」
「次回の登板に向けて、一言お願いします!」
「次回は前回よりもっといいピッチングをして、チームの勝利に貢献したいと思います」
「ありがとうございます。改めまして、今日のヒーローは、英河A選手でした!」
アナウンサーはそう締めくくった。Aはその姿を見届けてから、ゆっくりと歩き出してスタンドに頭を下げに行く。そしてベンチ裏へと戻っていった。
「ん」
すると颯一郎が、タオルを差し出しながら待っている。Aはそれを受け取ると、汗をかいた顔を優しく拭った。
「今日もかっこよかった」
「ありがとう」
そんな会話をしていると、颯一郎は満足気に頷く。そしてAの頭をぽんぽんと撫でた。Aも大人しくそれを受け入れている。
「おつかれさん」
「うん」
「飯行く?」
「行く」
「はいはい」
そう言って2人は肩を並べて歩き始めた。
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作者名:usa426 | 作成日時:2023年11月1日 23時