あと一歩、君には【男主】

ep8-チェコ戦＋@- ページ39

翌日のチェコ戦。リードを保ったまま、8回にAがマウンドに上がる。結局昨日はあまり眠れなかったからコンディションは最悪だが、なんとか抑えなければ。

　相手打線も強く、ちゃんと球を見極めるのでボールが続いてしまっている。

「……ふぅ……」

　何とか無失点で切り抜けた。ベンチに戻るとタクが声をかけてくれる。

「ナイスピッチです」

「ありがとさん」

「Aくん、調子悪いんですか？」

「え？めちゃめちゃ元気やで？」

「……あんまり無理しない方がいいですよ。なんならベンチ裏で休みますか？」

「大丈夫やって！ほら、次打順やろ？準備してき」

「はい」

　そう言ってタクはバッターボックスへ向かった。
　
　試合後、Aはバスに乗り込んでぐったりしていた。寝不足と疲労が祟って体も思うように動かない。
「大丈夫ですか？顔色あまり良くないみたいですけど」

　隣の席に座っていたタクが心配そうに顔を覗き込む。

「大丈夫」

「本当ですか？」

「ホテル帰ったら起こして」

　そう言ってAは目を閉じた。

「……くん、Aくん、起きてください。ホテル着きましたよ」

　肩を揺すられて目が覚める。

「ん……」

「歩けますか」

「だいじょぶ」

　Aは立ち上がり、荷物を持って立ち上がった。するとぐらりと視界が歪む。

「おわっ」

「危ない」

　背中をタクに支えられ、Aは何とか倒れずに済んだ。

「ごめん」

「いえ」

　タクはAのバッグを持つと、そのままAのペースに合わせて歩いてくれる。

「ありがとう」

「どういたしまして」

　エレベーターに乗っている間、2人は一言も話さなかった。Aはただ壁にぐたりともたれている。タクはAのバッグとタクのバッグを両肩にかけてAの方をじっと見ていた。

「Aくん、部屋着きましたよ？」

「ありがと」

「また明日」

「はい、おやすみなさい」

　そう言って部屋に入ろうとすると、後ろから腕を引っ張られた。

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