ep6 -中国戦- ページ25
いよいよWBC予選が始まる。初戦である中国戦は、すごく大事だとAは肌で感じていた。
「おはようございます」
ロッカールームに入ってユニフォームに着替える。そのまま練習へ行こうとして、Aは自分の腕に違和感を覚えた。
「ん?」
なにも傷がないはずなのに、痛い。幸い左腕だから何とか投げられると思って、Aは特に気にしないことにする。それが全ての間違いであった。いざ投げてみると、投球に集中できないくらい腕が痛かった。
「ナル、どっか痛いか?」
コーチにそう聞かれて少し言葉に詰まる。このまま言ってしまえばきっと辞退することになるだろう。しかし、言わなければもっと酷いことになる。
「……左腕が……痛いです……」
「そうか、わかった」
そう言うとコーチは監督の元へ行ってしまった。
投げたい。投げられないのは嫌だ。でもこれ以上投げても悪化するだけかもしれない。そんな考えがぐるぐると頭の中で回る。
ユニフォームの袖をまくってみる。
「……いづっ」
思わず声が出るほどの痛み。これはまずい。そう思っているとコーチが戻ってきた。
「ナル、今日は投げるな」
「え」
「今日は休んでくれ」
「でも……」
「お前、今の状態で投げ続けてみろ、一生野球できなくなるぞ」
「……はい」
「明日の韓国戦までにはちゃんと治せよ」
「わかりました」
そう言うしかなかった。
「ほら、これ飲んどけ」
コーチから渡されたのは鎮痛剤だった。
「すいません」
「謝るなら治してからにしろ」
「はい」
「とりあえず、今日の試合は見とけ」
「はい」
そうしてAはベンチで試合を見ることになった。試合には出られない。それはわかっていたことだけど、どうしてもマウンドが恋しくなってしまう。思わず手に持ったボールも握りしめてしまうほどに。
ふと気づけば、今の打席には牧がいる。
「あ、打った」
カーンといい音がして、牧はホームランを打った。ベンチの前の方へ行ってゴリゴリとペッパーミルポーズをする。
牧はチラッとAの目を見るとカメラの前で朗希たちと一緒に
「デスターシャァ!」
としていた。その明るい声に少しだけ心が軽くなった気がする。
「よし、頑張ろ」
そう思って後ろに戻ると監督がやってきた。
「ナルちゃん、試合終わったらすぐに病院行っておいで」
「はい」
そう言われて試合後、球場を後にする。本当は病院なんて行きたくなかったけど、この状態では無理だ。仕方ない。
129人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
てるてる坊主(プロフ) - ザキさん最高w更新待ってます! (7月27日 14時) (レス) @page46 id: 7989449218 (このIDを非表示/違反報告)
えど(プロフ) - 雰囲気すごく好きです!頑張ってください! (7月17日 3時) (レス) id: 67d2f217ce (このIDを非表示/違反報告)
てるてる坊主 - 中野君です!返信ありがとうございます! (7月15日 15時) (レス) id: 7989449218 (このIDを非表示/違反報告)
usa(プロフ) - てるてる坊主さん» ありがとうございます!!!もしよければその推しさんのお名前を教えてくださらないでしょうか…!短編とかのネタにしたいです! (7月15日 14時) (レス) id: 15f5f97ad6 (このIDを非表示/違反報告)
てるてる坊主 - 初コメ失礼します。僕の推しが出ててびっくりしてるうえに尊いです。これからも頑張ってください!応援しています! (7月15日 12時) (レス) id: 7989449218 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:usa | 作成日時:2023年7月5日 12時