あと一歩、君には【男主】

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「またやってるし……翔平」
　翔平の後ろから誰かの声がした。確か翔平の通訳兼今回のチームスタッフの水原さんだ。
「返してあげなよ。困ってんじゃん」
　呆れたように言う水原さんに、翔平は「ちぇ」っと言って帽子をAに渡した後、どこかへ行ってしまった。
「ごめんね、翔平が。Aくんに会えるの楽しみにしてたから、許してやって」
「全然大丈夫ですよ、大変っすね。水原さんも」
「はは、一平でいいよ。翔平、ヌーにもずっとAくんの話してたから(笑)あ、これ内緒で。じゃあ」
　そう言って一平さんは行ってしまった。あれ、と違和感を覚える。翔平とAは初対面のはずなのだが、たっちゃんに話すほどの情報をどこで聞いたのだろうか。その答えはすぐに見つかった。Aの元チームメイトであるナミと翔平は同学年で仲が良かったはずだから、ナミから聞いたのだろう。
　そう考えた後にAはタクに向き直ってニコリと笑いかける。先輩を裏切った罪は重いという意味を込めて。
「Aくん、な、なんですかその顔……」
「んー？」
「なんか怖いんですけど……」
「気のせい。それより、今日も俺の部屋でオセロやらん？」
「いいですよ、今日こそは勝ちます」
「今んとこ俺が3連勝中もんな。覚悟しときや、タク」
「望むところですよ。あ、ジュースとかいります？」
「オレンジジュース、あったらほしいな」
「了解です」
　そんな会話をしながらタクとAは部屋に向かって歩き出した。

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