あと一歩、君には【男主】

ep1-最初- ページ2

「成吉くん、出てみる？」
　
ある日の練習後、成吉Aは栗山監督と電話で話していた。

「えーっと……？」

「ああ、ごめんね。言い忘れてた。WBC」

　サラッとおつかいに行くレベルで重大なことを言われる。

一瞬WBCという別のイベントかと思ってしまった。

「え？俺がですか？」

「きみ以外に成吉はいないよ。中野くんと湯浅くんは出るって」

　監督にそう言われて、少し心が揺らぐ。2人とも、日本代表に選ばれるほど明確な強みがある。しかし、自分にはあるだろうか？それが分かっていないと、自分はきっと選ばれても役には立てないだろう。

「自分の強みはなんだろう、とか考えてる？」

「うっ……」

「どうする？それ抜きにしても悪くはない話だと思うけど」

「…………ちょっと考えさしてもらっていいですか？」

「明日、そっちに行く予定だから、そこで返事を聞かせてもらおうかな」

「分かりました。ほんなら、失礼します」

　そう言うとAは電話越しの監督に頭を下げて、電話を切った。

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