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「なんであんなドンドンしてんのに来ないの」
「純也くんが起きなかったんだよ」
「面白すぎるんだけど、どんだけ寝てたの」
「笑い事じゃないから！マジで怖かったんだからね！？」
「ごめんって、純也くんは？」
「まだ寝てるはず」
「寝てねえし」
「うわっ、起きてる」
「寝てることにすんなし」
Aと薫の会話に純也も混ざる。彼はまだ寝起きの余韻が抜けないのか目をこすっており、あくびをしながら伸びをしている。ワタワタと手を動かしたかと思いきや、Aにぎゅっと抱きついてきた。
「か、薫くんいるからダメです！」
「なに、ダメなの」
「ダメに決まってるでしょ！」
「純也くん、手離してください」
薫がやや低い声でそう伝えると、純也は嫌だと駄々をこねる子供のような仕草で頭を左右に振った。
「なんでですか！」
「やだもん」
「ちょ、かおるく……」
Aが困ったように薫の顔を見れば、彼もまた眉間に皺を寄せていた。このまま放っておくと本格的に喧嘩が始まってしまいそうだと危惧したAは2人を引き離すことに決める。純也の腕から逃れるようにスルリと抜け出して薫の元へ戻る。そもそも彼は自分のことを迎えに来てくれた……はずだ。
「薫くん、迎えにきてくれたんでしょ？」
「そう。一緒に帰ろうと思って」
「ありがと、」
「ほら荷物まとめて」
「もうまとめてる」
「準備早いね、流石。じゃあ行こうか」
純也はつまらなそうにこちらを見ているが、なんとなく関わらない方がいい気がして気づかないフリをする。荷物を肩から下げて2人並んで歩き始めると、Aがそっと口を開いた。
「……ごめんね、薫くん。八つ当たりして」
「いいよ。俺もごめんね」
「俺、ひどいこと言ったし」
「いいよもう」
「今日さ、一緒にご飯つくろうよ。オフだし」
「いいね、何食べたい？」
「んー、アクアパッツァ」
「魚さばけるの？」
「バカにしないでよ」
そんなやりとりをしながら歩いていく。なんだかんだ言いながらも薫と仲直りできたことが嬉しくてたまらない。それに、まだ少し燻っている薫への想いをどう処理すればいいのかも分からずにただただAは歩くのだった。
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
