. ページ7
「……」
周囲も真っ暗になった深夜、Aはふっと目を覚ましてしまった。横のベッドでは純也がスヤスヤと寝ている。なんだか無性に寂しくなって、彼のベッドに行こうと身体を起こすが、足に激痛が走った。
「痛ってぇ……」
思わず漏れ出た言葉は誰に拾われるでもなく暗闇に吸い込まれていく。そっと布団をめくりあげれば、そこには包帯を巻いた足があった。先程より幾分か痛みは和らいだが、あまり動かさない方が良さそうだ。かといってひとりぼっちは嫌なので、純也のベッドにそっと乗り上げて空いているスペースに横になる。
「純也くん、起きて……」
そう呟いてみたものの、彼は起きる気配が無い。きっと疲れているのだろうと思いそのまま彼の方を向いていると、彼の手がAの手に触れた。起きたのかと思って慌てて彼の顔を見るが、依然として気持ち良さそうに眠っている。どうやら無意識でAの手に触れているようだ。
「甘えん坊さん」
普段は年上ぶっている彼がこうして自分に甘えてくるのが嬉しくて、思わず笑みが溢れる。そのせいかなかなか寝付くことが出来なかったので、そのまましばらく純也の寝顔を眺めていたのだった。
翌朝、ドンドンというノックの音で目が覚めた。ノックというより、ドアをぶん殴っているような音で少し怖い。純也はそんなことも気にせずにスヤスヤと寝ている。
「純也くん！純也くん！！」
「んー？なに……」
「なんかドアドンされてるから助けて」
「……」
「二度寝しないでって」
「……」
寝ぼけているせいか、いつもよりも甘い彼はなかなか布団から出てこない。まるでAも一緒に二度寝しようと誘っているかのようだった。だが、そんな呑気なことを言っている場合ではない。ノックの音は一向に治まらずドンドンと鳴り響いているし、何ならドアノブまでガチャガチャ鳴っている。
「ねえ、ちょっとマジで怖い」
「んー」
「起きて！ドア壊れちゃう！」
そんなやりとりをしているうちにどんどんノック音は激しくなっていった。Aは純也のベッドから出て慌てて扉を開けるが、そこには誰もいない。不思議に思ってあたりを見回すと、必死に笑いをこらえる薫の姿がそこにあった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 64人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
