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「A、俺が今どんな気持ちでここにいるかわかる？」
「……わかんない」
「俺もわかんない。大事なやつが怪我したって聞いた瞬間、飛行機のチケット取ってた」
「なんで……」
「なんでだろう、俺も分かんない。でも、Aの側に居たいって思った」
純也の言葉は真っ直ぐで、だからこそAの心に響いた。先程までは薫のことで頭がいっぱいだったはずなのに、今は隣に純也がいることで心が満たされている。それが不思議でしょうがないが、今は彼の存在がとても有り難かった。
「ごめんね、」
「なんでAが謝んの」
「……多分俺が悪いから」
「どっちも悪い」
純也はそう言うとソファの背もたれに身体を預けるように伸びをする。その横顔をぼんやりと眺めていると視線に気づいたのか彼もまたAを見つめ返してきた。片眉をあげておどけて見せる彼は優しい。
「あ、靴下散らかってる」
「しまっといてー」
「怪我人なんすけど〜？」
「やってよめんどいから」
お互いに軽口を叩けるほどまで気分が落ち着いた頃、Aは思い出したように口を開いた。
「流石に悪いんでコーヒーとか紅茶とか淹れますよ」
「Aは座ってて」
「え、でも……」
「いいから。俺がやりたいの」
そう言って純也はキッチンの方へ消えていった。その背中を見ながら、Aは彼なりの気遣いに頬が緩む。薫もこうやってコーヒーや紅茶を淹れてくれたっけと思いながら、テレビのリモコンに手を伸ばしたのだった。
Aが泣き疲れて寝た頃、純也の携帯にメッセージが届く。見れば薫からで、
『A、そっちにいますか？』と書かれていた。
『いる。泣き疲れて寝た』
『迎えに行きます』
『いい。しばらくそっちも頭冷やした方がいいから』
それだけ送ると、純也は携帯を閉じてため息をつく。このメッセージのせいで、またAと薫の喧嘩が長引きそうな予感がしてならないのだ。
「俺ってこんなに面倒見よかったっけ」
思わずそんな独り言を零して頭を搔く。だが、その言葉とは裏腹に口元は緩んでいたのだった。
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
