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「……ナル、もう嫌なんやったらさ、オフの間でもええから、こっちおいでや。どうせ何日か後には代表戦行かなあかんけどな」
「……でも、逃げちゃダメな気がする。碧くんから」
「でもライバルと暮らすなんて俺は耐えられへんで。もっと自分を大事にせな」
律の言葉は心からのものである。Aは碧を嫌いにはなれないし、薫の邪魔もしたくない。しかし、このままの状態がずっと続くのは嫌だった。
「俺……どうしたらいいのかわかんないよ……」
「とりあえず、距離置く？おいでや、俺のホテル」
「え？」
「俺、ずっと一人やから」
律は笑顔でそう言うが、Aは即答出来ない。しかしそんなAを見かねた律が言葉を続けた。
「ま、とりあえず家に着替えとか取りに行ってから決めてええよ」
「……うん、」
こういう時にそばで支えてくれる親友がいるのは、本当にありがたかった。
一旦家まで送ってもらい、Aは着替えを取りに自室に入った。適当なバッグに服や下着を詰め込む。律が泊まっているホテルは、ここから車で数分のところらしい。
「あれ、Aどこいくの？」
薫とお揃いの部屋着を着た碧がマグカップ片手に問いかけてくる。その姿を見るのが嫌で、若干目を逸らしながら
「律んとこ」
とだけ答えた。すると今度は薫が顔を出してきて、Aに問いかける。
「なんで？」
「いや、ちょっと……」
「いいじゃん、ここいたら。リーグ戦とかあるんだし」
「別に何日も行くわけじゃないから」
「でも……」
薫は碧をチラリと見た。彼は不機嫌そうに眉を顰めている。Aはその反応を見て、やはり自分がいない方がいいと確信した。
「もう時間ないし、行ってくる」
「……うん」
薫が何か言いたそうにしていたが、それに気づかないふりをして家を出た。新しい家を探したほうが良いのかもしれない。もう自分はいらないのだと暗に言われている気がして、悲しいような、悔しいような、そんな気持ちだった。
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
