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二人の男に腕を掴まれて引っ張られる。さすがにマズイと思ったAは、助けを求めてあたりを見回した。しかし、みんな楽しそうにしていてこちらの様子になど見向きもしない。
「"ね、いいじゃん！"」
「"やだってば！"」
必死に抵抗するも男たちはしつこく迫ってくる。大声で誰かを呼ぼうかとも思ったが、あまり大事にしたくなかったし何より自分の男としてのプライドがそれを許さなかった。どうしようかと考えあぐねていたその時だった。後ろから誰かに抱きしめられる。それと同時に自分を捕まえていた男が離れたのを感じた。慌てて振り向くとそこには律がいる。彼はAの肩に手を置いて、男たちを睨んでいた。
「"俺の連れに何か用ですか？"」
いつもよりも少し低い声で律が言うと、男たちは怯んだように後ずさった。そしてそのまま逃げるように去っていく。
「ナル、大丈夫？絡まれとったけど」
「ああ……うん。律、ありがとう」
「いや、全然大丈夫やけど。あいつら何？なんかあったん？」
「えっと……」
Aが言い淀んでいると、律は何かを察してため息をつく。そして車のドアを開けてくれたので、Aはお礼を言って車に乗り込んだ。シートベルトを締めていると律も運転席に乗り込んでくる。
「……で、何があったん？」
もう逃げられないなと思ったAは諦めて口を開いた。薫にプレゼントを贈りたくてマーケットに来たこと、広場で声をかけられて一緒に回らないかと言われたこと、それを断っていたらしつこく絡まれてしまったことを説明する。律はそれを黙って聞いていたけれど、Aが話し終わると大きくため息をついてAの頭を撫でた。
「なんやそれ！はよ言うてくれたら良かったのに」
「だって……」
「家まで送るわ」
「待って！」
「ん？」
怪訝そうな顔で律がAの方を見る。Aは俯いて膝の上で拳を握りしめていた。その様子を見て律は色々察する。大方碧が薫とAの家に泊まり込んで、居心地の悪くなったAが家を飛び出したのだろう。それで行く当てもなくここにやってきたというところか。ぎゅっと握っている手が震えている。よほどストレスなのだろうか。
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
