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「はあ……」
大きくため息をついて、Aはスマホを開いた。薫からのLINEの通知がきている。
『ごめん、また相談なしに家に入れちゃって』
そのメッセージを見て、スマホを放り投げた。顔を手で覆ってもう一度ため息をつく。ああダメだ。こんなにやきもち妬きたくないのに、薫といるとすぐに嫉妬してしまう自分が嫌になる。薫は悪くないし碧だって悪くないのに、どうして自分はこうも心が狭いのだろうか。
「はあ……」
再び大きなため息をついてから、Aはエンジンをかけた。車を走らせてマーケットへと向かう。広場にはたくさんの屋台が出ていて、家族連れで賑わっていた。クリスマスマーケットはカップルが行くというイメージを持っていたのだが、そんなことはないようだ。
「"ママ、あれ食べたい！"」
「"んー、どれ？"」
手を繋いで楽しそうに話している親子を見ながら、Aは広場の隅っこに車を停めた。そこで缶コーヒーを飲みながら、クリスマスマーケットをぼんやりと眺める。そういえばルームツアーが終わったら二人で一緒にご飯でも食べるのかな、なんて考えたりして、また勝手に悲しくなった。
「はあ……」
今度は深くため息をつく。こんな自分が嫌だ。薫の邪魔ばかりするから、愛想を尽かされて振られるんじゃないかと思っているけれど、それでも好きという気持ちが止められないのだ。もういっその事他の人を好きになれたらいいのにと思う時があるけれど、それをすればしたで薫が恋しくなって仕方ないのだからもうどうしようもない。いっそ、薫は碧と幸せになってくれたほうが諦めもつくのに。
「"おにーさん、一人？"」
「"良かったら一緒にまわんない？"」
不意に声をかけられたAは顔を上げる。目の前には大学生くらいの男女が四人立っていた。Aが反応しないのを見て、さらに話しかけてくる。
「"ね、行こうよ"」
そう言って一人の男がAの腕を掴んだ。その瞬間にゾワゾワと鳥肌が立つ。思わずその手を振り払った。
「"あ、いや……俺人待ってるから"」
「"え？でもずっと一人じゃん"」
「"大丈夫だよ、すぐ終わるし！"」
「"ちょ、ちょっと……！"」
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
