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「……薫くん？」
「ん……ちょっときついかも」
「大丈夫？吐きそう？」
「ううん、大丈夫」
彼はそう言って再びお粥を口に運び始めたが、やはり途中で手を止めてしまった。代わりにぎゅっと目を閉じて眉間に皺を寄せている。明らかに様子がおかしいので慌てて声をかけた。
「具合悪いんでしょ？食べなくて良いよ」
「やだよ……」
「なんで？」
そう問いかけると薫は視線を逸らしてしまう。何か言いづらいことでもあるのだろうかと思っていると、やがて彼は小さな声で答えた。
「……もったいないじゃん」
「もったいないって……今はそういうこと考えてる場合じゃない、下げるよ」
「……」
Aは薫の手からお粥を奪い取って机の上に置いた。残りは自分の昼食にでもしようかと考えながら食器を下げると、薫はしょんぼりとした顔でこちらを見つめてくる。
「ダメです、薬飲んで」
「……」
「そんな顔してもダメ」
「わかったよ……」
渋々といった表情で錠剤を飲み込んだ薫を見届けてからキッチンに移動する。先程作ったお粥の残りが入っていた鍋を洗っていると、背後に気配を感じた。振り返るとそこにはなぜか立っている薫の姿がある。
「寝ててって言ったじゃん。戻って。ほらゴーバック」
「え〜」
「え〜じゃなくて。薬効いてきたら眠くなるから」
そう言って背中を押して寝室へ戻すと、彼は渋々といった様子で布団の中に潜っていった。その様子を見てから洗い物を済ませる。ソファに座ってトレーニングの内容などを考えていたら、いつの間にか寝てしまっていた。
薫の様子を見ようと寝室へ足を向けると、彼は苦しそうに呻いていた。額に触れるとかなり熱いことがわかる。
「薫くん？」
呼びかけても返事がないということは意識が朦朧としているということだろうか。とりあえず体温を測ることにして、冷却シートを貼り替えてからもう一度布団を被せた。すると突然手を握られて驚く。その手は僅かに震えていた。
「A……」
名前を呼ばれて慌てて返事をするが、返事はなかった。その代わりに再び寝息を立て始める。その寝顔を見ているとなんだか辛そうに見えたので、頭を撫でたり、氷枕を取り替えたりと看病をし続けた。
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
