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長いフライトを終えて空港に着くと、薫が待っていてくれた。
「おかえり」
「ん、ただいま」
それだけ言葉を交わすと2人で車に乗って家に向かう。運転してくれている薫の横顔を見ながら建英の言葉を反芻してみる。薫の気持ちを、とはどういうことだろうか。
「薫くんさ、俺がなんかしてたら注意してね」
「うん？急にどうしたの？」
「いや……別になんでもないよ」
不思議そうにしている薫を見て、それ以上は何も言うことができなかった。家に着くと、薫はソファーに腰掛けてスマホを弄り始めた。その隣に座って一緒にテレビを見る。なんとなく手持ち無沙汰になったので彼の肩にもたれかかってみると、彼は何も言わずに頭を撫でてくれた。そのまましばらくそうしていたが、やがて彼が口を開く。
「Aは、もっと危機感持って欲しいな」
「え？」
「あんまり無防備なところ見せないでって言ってるの」
そう言って彼はAの頬に触れてきた。そのまま指先で唇をなぞられるとなんだか恥ずかしくなってしまう。慌てて視線を逸らすと、今度は首筋に触れてきた。ぞくりと背筋が震える感覚に襲われる。建英に触れられた時とは違う感覚だ。思わず息を詰めていると、いつの間にか薫の顔が近づいてきていた。
「だ、ダメ！待って！」
慌てて制止すると彼はあっさりと離れていった。ほっと息をつくと再び彼の肩に寄りかかる。すると薫は小さな声で呟いた。
「こういう顔も、あんまり見せないで」
「……え？」
「なんでもないよ」
彼はそう言うとAを抱きしめる力を強めた。なんだか愛おしさが伝わってくるような気がして胸がいっぱいになる。建英に言われた通り薫の気持ちを考えてみると、少しだけ罪悪感が湧いた。
「あの……ごめんね」
「ううん、大丈夫」
薫はそれだけ言うとAの頭を優しく撫でてくれた。その心地良さに目を細めると、彼は優しく微笑んでくれる。こうして2人の休日は幕を下ろしたのだった。
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
