ありえないほどに、君は【Ⅲ】 (ページ15)

今日:21 hit、昨日:24 hit、合計:7,381 hit

. ページ15

「Aくん、酔っちゃった？」

「調子乗ってワイン飲みすぎた……」

「珍しいっすね」

「普段はあんな飲まないから……」

そう言いながら車の窓に頭を寄せると、建英が心配そうに顔を覗き込んできた。その視線から逃れるように顔を背けると、建英は小さくため息をつく。そして車を道路の端に寄せたかと思うと、再びこちらに向き直った。そのまま後部座席から上着を取ってきたかと思うと、パサとかけてくれた。彼の優しさに自然と笑みが溢れる。

「ありがと」

「どういたしまして」

建英はそれだけ言うと再び車を走らせる。その横顔を見ながらぼんやりと意識を浮かせていった。建英の家に着くまでは、まだ少し時間がかかりそうだ。

建英の家に着くと、彼は優しくAを玄関に座らせてくれた。そのまま靴を脱がせると、何も言わずに手を引いてくれる。その優しさに甘えるように全てを任せていると、やがて寝室に到着した。

「はい」

建英はそう言って上着を取り払ったかと思うとベッドを指差した。どうやら寝ろということらしいが、まだ眠る気にはなれない。

「まだ話したい」

「薫くんに言いつけますよ」

「それはやだ」

「ならおとなしく寝てください」

そう言われてしまっては従うほかない。仕方なく横になると、建英が布団をかけてくれた。そして電気を消して部屋を出て行ったかと思うと、すぐに戻ってくる。手にはミネラルウォーターを持っていて、それをサイドテーブルに置くとAの横に座った。そのままAの髪を梳きながら微笑むと静かに口を開く。