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「やっばい寝過ごした！」
目を覚ますとすでにあたりは真っ暗に染まっていた。慌ててスマホをつけると時刻は午後5時を回っている。さすがに寝すぎたかと焦っていると、隣で眠っていた建英がもぞもぞと動いたあと、ゆっくりと目を開けた。
「あ、ごめん、起こした？」
「いや……んん……いいですよ」
そう言いながら目を擦る姿はなんだか幼い子供のようで可愛らしい。そんなことを言ったら怒るだろうか、なんて考えているうちに彼は起き上がって伸びをした。そして何かを思い出したかのようにこちらを振り向くと言った。
「どっか行きます？」
「行きたいとこあるなら行く」
「行きつけのお店あるんで、そこ行こ」
「いいね」
2人はそう言うと、出かける準備をして家を出る。再び建英の車に乗り込んで着いた先はおしゃれそうな料理店だった。行ったことがないほどの高級店ではないが、年下に奢ってもらうにはなんだか申し訳ない気もする。だが、建英は気にしていない様子でさっさと中に入ってしまい、Aは慌てて後を追った。
「Aくんの好きそうなやつ、頼んどくよ」
「ん、お願い」
「これおすすめ。Aくん好きそうな味してる」
「ほんと？」
「はい、一口」
「ん、」
差し出された料理を口に入れる。確かにおいしい。これは当たりかもしれないと思いながら堪能していると、ふと視線を感じたので目を上げた。すると建英がじっとこちらを見ていたことに気付く。どうしたのかと首を傾げると彼は口を開いた。
「いや、なんでもないっす」
「ふーん」
とりあえず料理をもう一口食べる。だが、なんだか視線を感じるような気がしてならなかった。ちらりと建英のほうを見ると、彼は嬉しそうな笑みを浮かべてこちらを見ている。
「Aくん、俺があげたの、おいしかった？」
「うん、おいしい」
「よかった」
建英はそう言って微笑む。それからもちらちらとこちらを見てくるので、なんだか居心地が悪い。仕方なく建英に問いかけることにした。
「さっきから何見てるの？」
「いや？ただAくんが美味しそうに食べてるなあと思って見てただけっすよ」
「……彼女かよ」
「いや、俺男なんで」
「知ってるよ」
冗談を言って笑っていると、料理が運ばれてきた。2人で食べながら話しているとあっという間に時間が過ぎていく。夕食を食べ終わり、帰路につく頃には夜も深まっていた。
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
