ep21 ページ13
「あ、」
「どうしたんですか？」
建英が首を傾げながら問いかけてくる。そんな彼にAは画面を見せながら言った。
「これ、薫くんのアカウントだよね？」
「っすね」
「なんかフォローバック？できるみたいなんだけど」
「したらいいんじゃない？」
「できるかなあ」
建英の心配をよそにAは薫のアカウントをフォローした。すると、すぐにメッセージが飛んでくる。なんだろうと思って開いてみると、『なにしてんの』『浮気？』と書かれていた。どうやらインスタをチェックしていたらしい。
『怖いよ、違うし』
『ほんと？』
『タケと2人で撮っただけ』
そう送れば建英が画面を覗き込んできて、薫から送られてきていたメッセージを見せる。すると彼は少しだけ困ったように笑った。
「なんか浮気相手認定されてるよ、タケ」
「まじで？」
「うん」
2人はクスクスと笑い合いながら他愛のない話をする。薫が嫉妬してくれたことがなんだか嬉しくて、思わず笑みが溢れた。そのまましばらくサッカーについて話したり近況報告をしたりして、気づけば1時間以上話していた。
「午後、どうします？」
「ん……うーん……」
「ちょっと、聞いてる最中に寝ないでよ」
建英の言葉に小さく返事しながら目を擦るAを見ながら考える。この様子なら連れ回すのは難しそうだ。
「今日はゆっくりしましょう」
そう言って建英がブランケットを2枚取り出す。それを1枚渡され、もう1枚は建英が使っている。どうやら一緒に寝る気らしい。Aは遠慮がちに寝転ぶと、建英がぽんぽんと頭を撫でてくれた。なんだか子供扱いされている気がして少しだけ不満だったが、悪くないなと思い直す。
「朝4時とかに起きたから眠い」
「ちょっと寝ます？」
「うん、そうする」
建英はAの返事を聞きながら彼の髪を指に絡める。ふわふわとした髪は触り心地が良くて癖になりそうだ。しばらくそのまま触っているとしびれを切らしたのか、Aが眠そうな目で建英を見上げながら口を開いた。
「ねないの？」
「寝ますよ」
そう言いながらも建英はなかなか眠ろうとしない。それどころか髪をいじったり頰を触ったりとやりたい放題だ。いい加減鬱陶しくなってきたので彼の手を掴んでそのまま目を閉じた。
「え、Aくん？」
「おやすみ」
それだけ言うと彼はすぐに眠りについてしまった。薫や律が惚れ込む理由が少しだけわかった気がして、建英はため息をついて目を閉じた。
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
