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建英はAから目を外し、タブレットに向き直ると忙しそうに指を動かし始める。Aはそんな横顔を見つめながら彼が作業を終えるのをじっと待っていたが、やがて小さな欠伸を漏らした。思えば朝早くから今まで動いているし、ここに来るのも大変だったのだ。眠くなってしまってもおかしくはないだろう。
「眠いんすか？」
「んー……」
「寝てていいですよ」
建英がそう言ったので、Aは彼の言葉に甘えることにした。こてんと彼の肩に頭を預けるとそのまま目を閉じる。すると不思議なことにだんだん眠気が増してきて、次の瞬間には夢の世界に旅立っていた。
夢を見た気がするが、起きたときにはもうどんな夢だったのか思い出せなかった。だが、なんだか幸せな夢だった気がすることだけは覚えている。ぼんやりする頭でソファに座っていると、建英がブランケットやら何やらを抱えてリビングへと入ってきた。
「あれ、起きてる」
「んー……なんか夢見た気がするんだけど……」
「どんな？」
建英の言葉にAは首を傾げつつ、夢の内容を思い出す。けれどやはりそれは霞のように消えてしまい、結局何も思い出すことができなかった。
「忘れちゃった」
「……そか」
そんな会話をしながら2人でのんびりしていると、ふとインスタの存在を思い出した。
「タケ、俺インスタ開設したいんだけどさ、やり方教えて」
「いいっすよ」
建英はスマホを取り出しながら言う。そんな彼の隣に座り、自分のそれを起動させた。アカウントの作り方を聞きながらやっていると、建英はそんなAの姿をニコニコと眺めている。
「なに？」
「いや、別に？」
「あそ」
特に気にもせずAは手を動かしていく。その様子を見ながら建英は手を伸ばしてAのスマホを奪った。カメラを起動してAを引き寄せると、そのまま自撮りをする。
「なにしてんの？」
「んー？アイコンにするから、貸して」
「ん、」
建英は慣れた手つきでアイコンやプロフィールなどを埋めていく。とりあえずはクラブと背番号でいいだろうと言われたのでそれに従った。あとは人をフォローするだけだ。
「薫くんでしょー、律でしょー、純也くんでしょー？あと誰？」
「トミくんとー、僕と、滉くんとか」
建英に言われるがままにフォローしたい人をリストアップしていく。しかしアカウント名がわからずに諦めてしまった。
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
