ep18 ページ2
チームに戻っても試合は続く。薫と共にスタメン出場した試合で、Aがボールを持って駆け上がっている時だった。足に激痛が走り、思わずその場にうずくまる。
「おい！大丈夫か？」
チームメイトが駆け寄ってくるのに大丈夫と返事をし、立ち上がろうとした瞬間また激痛が足を襲った。チームドクターが駆け寄ってくるのが見えたが、Aはそのまましゃがみこむ。彼らに支えられながら、Aはベンチへと運ばれていった。
「"ナル、大丈夫か？"」
「"わかんないです、痛いし、なんか、変な感じがして"」
「"ひとまず裏に行って応急処置をしよう。歩けるか？"」
「"痛みは引いてきたので、多分、大丈夫だと思います。歩けますけど、変だったら支えて貰えますか？"」
「"もちろん"」
メディカルスタッフからそう返事をもらいながらベンチ裏にたどり着くとドクターに怪我の処置をしてもらう。病院に行って詳しい検査をしなければわからないが、恐らく捻挫だろうということだった。Aはそれを聞きながら自分の不甲斐なさに嫌気が差した。試合に出たのは今回が初めてではないし、何度も怪我を経験しているのに未だにこの痛みに耐えられない自分が情けない。そう思いながらも足に目をやると紫色になっているのが見えてしまって気分が落ちた。
「"ナル、暫くの間チームから離れて安静にしているんだ"」
「"それは……しばらく試合に出られないってことですか？"」
「"そういう事になるな"」
試合後、監督と少し話をしたあと車に乗って家に帰る。明日病院へ行けとのことだ。車の中でかかっている音楽さえも、今のAには煩わしく感じた。
「……ただいま」
家の電気はついていたので、Aはリビングに入る。薫が今日の試合映像を見ながら、何やら考え込んでいた。
「あ、おかえり」
彼がそう呟いてからこちらを向いて微笑んでくれた。Aはソファに座ると、薫がリモコンを操作して映像を止める。そしてこちらに近寄ると隣に腰掛けた。
「足、痛い？」
「痛い」
「ご飯は？」
「冷蔵庫にあるからオーブンで焼いて食べて」
オフに作り置きをしていたおかずをテーブルに出しておいてくれたので、それをレンジで温めて食べる。その間も薫は隣に座って心配そうにこちらを眺めていた。
「他に何かいる？欲しいものとか」
「いらない」
「そう」
いつもよりも口数が少なくなっているAに、薫は悲しそうな表情を浮かべる。色々な感情が混ざってどうすればいいのか分からなくなっていた。
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作者名：usa | 作成日時：2024年2月3日 8時
