笑わせないでよ【シルバー】 (ページ40)

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宝の持ち腐れページ40

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パチパチと拍手が聞こえてくる。ハーツラビュル寮で聞いたものより、品があって優しいものだった。あれは面白くて、喜んで拍手したといった感じだったが、今回はAを祝福するような、歓迎するようなものだった。

拍手が聞こえてきてからハッとした。顔に熱がともっていく。

「イルカちゃんめっちゃ上手いじゃ〜ん」

「ええ、お上手ですよ。アズールにも聴かせてやりましょう。」

『無意識だったんだよ、もうやめてくれ……』

Aはしゃがみ込んだが、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。ジェイドは完全に揶揄っているが、周りの寮生は本気で感動していた。クラスメイトの寮生が集まってきて、褒め千切られた。純粋に嬉しかった。

『……冗談でも人魚に上手いって言われるのは嬉しいな。』

「おやおや、冗談ではないですよ。本心です。」

『信用できない。』

「あはは、もっかい歌って！」

『え、やだ。』

本当に、これ以上は無理だ。Aがギッとジェイドを睨みつけると、彼はAではなく、その奥の方を見て言った。

「………おや、アズールいたのですか。」

『え゛！？』

くるりと後ろに振り返ると、いつの間にかアズールが来ていた。は、初めからいたのか？？？

『い、いつから……』

「初めから、と言うのが正解でしょうね。」

アズールは動揺からか、何度も眼鏡を触っている。Aも動揺していた為、頭を抱えしゃがみ込んだまま俯いた。

『うわああん！もうやだ！恥ずかしい……』

「イルカちゃん意外と恥ずかしがり屋だよね～。」

「可愛らしいじゃありませんか。ねえアズール。」

「う、うるさい。黙っていなさい。」

アズールさんはコホンと咳を一つ吐いた。

「Aさん、モストロラウンジで歌ってみませんか？」

『はぇ？』

アズールの顔はさっきまで汗ばむほど真っ赤だったのに、すっかりビジネスモードになっていた。癖なのだろうか、にっこりと胡散臭い笑みを見せた。

「聴かせてもらいましたが、Aさんの声はこの世に二つとない美しい声です。」

『言いすぎです。』

「ぜひ、ここモストロラウンジで生歌を披露し貢献していただきたい！」

『無理無理無理！そんな上手くないし！』

私は顔の前で手をバッテンにした。本気で人に聞かせられるほどのものではない。宝の持ち腐れ？謙虚すぎ？耳が聞こえてない？なんとでも言え！

そう言って抵抗したが、ＶＩＰルームまでジェイドに引きずられていった。