笑わせないでよ【シルバー】 (ページ37)

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詫びタルトページ37

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リドルたちの様子に気付いたケイトとエースが秒速ご機嫌取りに来た。後からデュースとトレイもすぐにやって来た。

「な、なあ！Aはリドル寮長の詫びタルト食ったのかよ。」

『詫びタルト？なにその詫び石みたいな……』

「Aはどこのゲーマーだよ……」

エースとデュースに説明してもらうと、皆で作ったマロンタルトのお詫びに、リドルが『一人で』作ったものらしい。この『一人で』ということが重要らしい。何故か皆くすくす笑っているが、意味が分からなかった。監督生までもが笑うのを堪えている。グリムなんて腹抱えて笑ってんのに。

何とも言えない表情で苺タルトを一切れ差し出すリドルに、若干の違和感を覚えた。まあ、違和感の正体には直ぐに気付いたが。

Aはその匂い(・・)に眉をひそめた。何故、苺タルトから『オイスターソース』の匂いがするのか。みんなが笑いを堪えていることと、合点がいった。

『……まさか、トレイ先輩の言ったことを真に受けたんですか？？？』

「げっ、なんで気付くんだよ！」

エースはおもんな～と言って下唇を尖らせた。Aはタルトに目が釘付けだ。

『こんだけオイスターソースの匂いがプンプンしてんだから気付くよ。いやぁ、まさかここにも必殺料理人が……』

ふと、父の顔が思い浮かんだ。その手に持つ鍋の中には、緑色のドロドロした液体が入っている。

ほれA、ビーフシチューじゃ。冷めぬうちに食べてしまえ。

『もう、アレを食べることはないのか……』

エースが聞き返してきたが、呟きが小さくて聞き取れなかったようで、Aは安心した。取り敢えず笑って誤魔化しておく。

「……A？」

『親父殿の料理よりはマシ親父殿の料理よりはマシ……』

「自己暗示すんな」

Aは魔法の言葉を呟いてタルトにフォークを突き刺した。

『……「薔薇を塗ろう(ドゥ―ドゥル・スート)」！！』

「馬鹿じゃねーの。」

『デスヨネ―』

人から貰ったタルトの味変とか失礼にも程がある。Aは乾いた笑いを零した。みんながハラハラドキドキワクワクニヤニヤする中、Aはタルトを頬張った。

『……あれ？思ったより美味しい？』

「ええええ！Aまでグリムと同じかよ！」

『え！グリムと同じは心外！』

だって想像の100倍はまともな味だったんだもん！Aの嘆きがエースの心に刺さることは無かった。