笑わせないでよ【シルバー】 (ページ34)

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Ace ページ34

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エースは何も言わなかった。寧ろ面倒臭そうに溜息を吐いた。

「……ま、いっか。」

「エース！？」

デュースは目をまん丸にしてエースを見た。何故、奴らが私の転寮にそんなにこだわっているのか。エースが意見を変えただけで、デュースが驚くのか。

『……ああ、成程。』

スッ……と冷静になった。大体察しがついた為、書類に目を戻した。特に腹を立てることもなく二人に言った。

『大丈夫、あたしから直接リドル先輩には言っておくから。……どうせ、頼まれたんでしょ？』

Aがそう言うと、エースは「ま、バレるとは分かってたし」と頭をかいた。デュースは顔を顰めてAを見た。

「……いや、頼まれただけじゃない。Aはハーツラビュル寮に必要なんだ。」

『なんで？特待生だから？』

今の言い方はキツかっただろうか。少し心配したが、デュースはそんなことを気にも留めなかった。ま、そんなヤツだったよ。Aはデュースを見据えた。

「違う！Aはハーツラビュル寮の一員だろう。……仲間が減るのは、悲しいことなんだ。」

デュースがそれ以上言うのをエースが止めた。エースはなんだかんだ、私のことをよく分かってくれてる。

「あーもうやめやめ！転寮手続き終わってんなら今更何言ったって無駄じゃん。」

『流石エース。よく分かってる。諦めがいい。』

「それ褒めてんの？」

『この上なく褒めてるよ』

イェーイ(テンション低め)……とエースとグータッチをした。グリムに呆れられ、デュースには溜息を吐かれた。

「……Aがいいならいいんだが……」

私はなかなか良い友人を持ったと思う。心配して怒ってくれる。偶にはワガママを言ったり、言われたり、喧嘩したり、笑ったり、泣いたり。茨の谷では、こんな友達いなかったな………

Aはささっと書類整理を済ませ、今日は四人と沢山お喋りすることにした。

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薔薇とペンキの鼻を刺すような匂いが漂う。懐かしさすら感じるそれに、想い馳せている時間などなかった。遅刻している。

いつかリドルに褒められた赤薔薇の寮服を身にまとい、白いウサギを追いかけるように駆け走る。もうこの服に袖を通すのが最後だと思うと、少し寂しいような気もする。
パーティ会場へ近付くにつれて寮生たちの声がはっきり聞こえてきた。遅刻を責められたらどうしようか。

寮生の中心にいる彼は、前よりずっと格好良く見えた。