笑わせないでよ【シルバー】 (ページ4)

今日:18 hit、昨日:40 hit、合計:117,672 hit

ブロットがページ4

Aside

Aが目覚めてすぐ視界に入ったのは、アズールだった。

あれから何時間経ったのか。どうして彼がいるのか。自分はなにをしていたのか。そもそもここは一体どこなのか。グルグル思考を巡らせるも、分からなかった。

アズールはというと、Aが寝ていたベッドの脇の椅子に座り、気持ちよさそうに眠っていた。彼を起こそうとも思ったが、あまりにもすやすやと快眠している為、なかなか起こす気になれなかった。仕事で疲れているのだろう。Aは深い眠りをとれる様にユニーク魔法をかけた。

『「私に触れないで(イッツ・ア・ララバイ)」』

マジカルペンを軽く振ると、頭痛がした。仕方ない。今回倒れた原因は魔力の多量消費も関わっているだろうから。マジカルペンの魔法石を確認した。ゲッ…と女子らしからぬ声が出た。鮮血の様に真っ赤だった魔法石には、真っ黒なブロットがぽつぽつと溜まっていた。

まずいな、暫く魔法は控えよう。休養もしっかり取らなくては。誰かに見つからない様にマジカルペンをポケットにしまった。

だが、じっとしていても仕方ない。冷静になって辺りを見渡してみると、内装はオクタヴィネル寮のものだった。やはりここはオクタヴィネル寮だ。

何事も冷静に判断しなければ。自分には直ぐ突っ走ってしまう嫌いがある。しかし懲りずにAはベッドから出た。かわりにアズールをベッドに寝かせた。

『さて、と……』

ここは客室だろうか。両手を払いながら部屋をキョロキョロ見渡した。客室の間取りにしては広すぎないか？それに物も多い。よくよく見れば制服も吊ってあるし生活感がある。誰かの部屋か？

Aはまだあまり嗅覚が戻ってきていなかった。頭痛のせいで色々鈍っているのだ。さっきまで眠っていたのもあるが。

やっと嗅覚が戻って来たなと思うと、ビックリするほど頭が冴えた。

『寮長室か……』

人の部屋は得意じゃないんだがな。匂いには敏感なんだよ、特に毒とか薬とかは。しかし、今回はそんなことはなかった。

自分の体には彼の匂いが染みついている。まあ、嫌いな匂いじゃないけど。獣人からすればビックリ案件だろう。暫くレオナには会えない。

そういえば制服も乾いているし、ジャミルの匂いもすっかり無くなっている。誰か乾燥魔法でも使った？感謝。

Aはもう一度部屋を見渡した。部屋から出るべきか否か。そして自分の手元にジャミルのブレザーがないことに気がついた。