雨は嫌い。 ページ30
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『……アズール?』
Aの手を掴んだまま何も喋らないし、その手は彼の頬に添えられたままなので動けない。さっきまでひんやりしていた顔から、ぬくもりを感じてきた。そうすると、やっとアズールが口を開き、消え入りそうな声でそっと言った。
「……すいません。少しだけ、こうやっていてもいいでしょうか。」
そんな急に弱々しくはにかまれたら、困るじゃないか。
Aの手を掴んだまま目を瞑っている彼は、かなり無防備に見えた。出会って1ヶ月経ったくらいの人間にこんなに心を開くなんて、相当参っているのか、相当信用されているのか。
『……あの、アズールさん、手汗が……』
「アズール、と呼んで下さい。」
『……アズールあたし、手汗がヤバいと思うから……』
「すいません、もう少しだけ……」
まんまと熱が伝染したAは、まともにアズールの顔を見ることもできない。かく言うアズールも、目は下に逸らしている。暫くすると手を放して貰えた。
『……本当に、溜め込み過ぎないでよ?』
「…はい、心配をかけてしまってすいません……」
双方気まずくて目も合わせない。ただ、相手を気遣っていた。暫くして気まずさを打開するようにフロイドが入ってきた。本当に助かった。火照った顔を気付かれないように手で仰いだ。
そしてジェイドも戻ってきた。計ったかのように入ってきたジェイドに若干違和感を感じつつも、なにも知りたくない為、聞かなかった。
熱砂での体験を彼らに話すと、食いつき様が凄まじかった。そりゃそうだ。海出身の彼らからすれば陸なんて興味の塊で、ましてや熱砂なんて縁遠いもの。一通り話し終えて、Aは話を切り出した。
『……さて、明け渡しますか。』
「……本当に、いいんですね?」
『ええ、煮るなり焼くなりしてください。』
今から私は、
『なんか、要らないものを押し付けるようなことしちゃってすいません』
「いえ、気にしないでください。これは取引ですから。」
彼はいつも自分の欲しい言葉をくれる。誰よりもAを思って発言をする。傍からすれば『なんでそんな風に言うんだろう。』って思われるかもしれない。自分からすれば『なんでそんなに私を喜ばそうとするんだろう。』としか思えない。
私のことを思って、突き放してくれる人。偶に自分から甘えてくれる人。雨に降られる私に、傘を差し伸べてくれる人。
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作者名:天 | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur
作成日時:2020年8月25日 20時