笑わせないでよ【シルバー】 (ページ26)

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太陽の石ページ26

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『……思ってたより暑くない。』

「Aは面白いことを言うなぁ。大体のヤツは暑いって言うぞ。」

『本で読んだ熱砂の国はもっと煉獄みたいな描写だった。』

ジリジリと日差しが肌を刺すように照り付ける。何処までも続く砂漠の上、場違いな色白さを持つ天使のような少女は、唇を尖らせて溜息を吐いた。首筋を伝う汗が照らされ、それさえも美しく輝く。
日長石のような輝きを持つ瞳は、ある建造物を真っ直ぐ見据えていた。

A・アジームは、十数年振りに実家に帰省する。拳に汗を握った。この大きな建造物の中で、父親と母親が待っているのだ。

本当に、憶えていない。下に沢山兄弟がいるとも聞いた。

私はいなくてもいいんじゃないか。私がいなくてもみんな幸せなんじゃないか。そんな考えが頭から離れない。

『………』

「そんなに緊張しなくても大丈夫だ！みんなAを歓迎してるからな！」

『兄さん……』

Aはカリムに頭を撫でられた。それで少し緊張が解れた。彼のこの底抜けの明るさで何度助けられたんだろうか。

「もうすぐでパレードが始まるはずだ！」

『ちょっと待ってなにそれ』

聞いてないんだけど。パレード？？パレードってあの？
Aは勢いよく振り返り、黒髪の彼にどういうことか説明する様目で訴えた。ジャミルは溜息を吐いて「俺は止めたんだからな。」とぼやいている。いや、止まってないけど

『……パレードってなんだっけ？』

「大切な客人を歓迎する為にする宴だ！象や孔雀、七色の……」

『ストップストップ待て待て兄貴。……ジャミル？？？』

「俺は止めた。」

『それしか言えないの？？いや、止まってないけど。』

カリムに言っても無駄なことは分かっている。ジャミル、おい、ジャミルこっちをちゃんと見ろ。目を合わせろ(怒)段々近づいて来る音楽を無視してジャミルの肩を揺さぶった。

「カリムに言ったって聞かないのは知ってるだろう。」

『知ってた！知ってたけど！』

「カリムが折角(無い知恵絞って)計画してくれたんだ。(可哀相だろう)喜んでやれ。」

『()が見える()が。』

Aがジリジリと振り返ると、キラッキラの笑顔で言われた。

「Aの為に頑張ったんだ！楽しんで行ってくれよな！！」

太陽を背負って何とも神々しく見える兄の笑顔は、太陽をくすますほどに輝いていた。

『……は、はは…』

Aの乾いた愛想笑いをジャミルは見て見ぬふりをした。兄の笑顔が今だけは憎たらしかった。