笑わせないでよ【シルバー】 (ページ25)

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努力ページ25

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自分はオクタヴィネル寮のゲストルームを借りている。その内部屋分けもされるのだろう。何もかも任せてしまって申し訳ない。

正直、オクタヴィネル寮(この部屋)は過ごしやすい。ハーツラビュル寮とは違って、外観より実用性に長けている。だが清潔感があり、なにより目がチカチカしない。赤やら黒やら派手なハーツラビュル寮とは違って落ち着きがある。

ジェイドに貰ったアクアリウムを見ていた。照明の優しい光を浴び、きらきらと輝く水槽の熱帯魚。ひらひらと尾をたなびかせ気ままに泳ぐ熱帯魚が、羨ましいと思ってしまった。

彼が好きなのはテラリウムらしいが、自分が陸出身だからと、アクアリウムを作ってくれた。意外とジェイドとは気が合うかも知れない。テラリウムなんてロマンチストな趣味はないが。

ふと、壁に掛けてある制服に目を移した。腕章も、制服も、マジカルペンも、すっかりオクタヴィネル仕様だ。

ただ、一つだけ、入学してから何も変わっていないものがある。

『……もう使わないんだろうけどな………』

少し年季の入った警棒が目に入った。所々見える傷痕は過去の努力の証だ。

「努力は報われない」それは重々承知しているはずだった。”報われるために努力したのに”そんな言い訳はしたくなかった。だって、努力なんて自己満足に変わりないじゃないか。そもそも努力というものは、どこからが努力という境界線がない。

自分を戒めるための【努力】

自分を肯定する為の【努力】

他人に認められた【努力】

他人に認められたいからする【努力】

Aやリドルは勿論最後者だった。誰かに見てもらいたい、自分をもっと見て欲しい。リドルの場合、対象は『母親』だった。だが、Aの場合もっと質が悪い。『仲間』に認められたかったのだ。彼らに置いていかれたくなかった。その為に血反吐を吐く努力をした。誰よりも努力をしたし、涙なんて見せなかった。

幸せになる為の【努力】

どうしても、捨てる気になれなかった。

それが、マレウス様(大切な人)を守る為に覚えた『人を傷つける方法』でも。それが、一度も役に立ったことが無くても。

思い出はそう簡単に捨てられない。

幸せな記憶はそのままで、なんて

『都合良すぎ……』

努力が報われると信じたリドルを突き放したのは、彼の心の清さに嫉妬しただけだ。誰よりも報われたいと思っているのは、自分に変わりないのに。