笑わせないでよ【シルバー】 (ページ17)

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及第点ページ17

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「……貴女が誰であろうと、関係ありません。特待生だろうが、呪われていようが、僕が惚れた『A・アジーム』には変わりありません。これは同情ではありません。純粋な善意でもありません。惚れた弱みというやつです。貴女の力になりたい。
怖がらないでください。大丈夫です。貴女が一番知っているはずです。契約は、嘘を吐かない。」

彼も必死だ。私が情で動く人間を信用しないのを知っている。だから、【契約】という手をとった。傍から見たら、薄情な人間だ。弱っている人間に契約を持ちかけているのだから。そこまでして、自分を助けようとしてくれている。俯いたまま、震える声をどうにか喉から絞りだした。

『……アズール。』

「……はい。」

『……秘書ってなにすればいいの。』

突然のAの変化に、アズールは驚かなかった。『及第点だ』と言わんばかりの落ち着きぶりだった。向上心のお高いこと。

「……ではその件は、今日放課後モストロラウンジで。」

『……分かりました。では、』

「大丈夫なのですか？」

『……ふふふ、本当に思ってますか？』

「思ってますよ。」

アズールは溜息を吐いた。Aは笑った。

『もう、大丈夫ですよ。なんか平気になりました。』

「やけに早いんですね。」

『あたしの情緒が不安定なのは知ってますよね。』

アズールは目を細め、また溜息を吐いた。しかし先程までの怒りを含んだ声色ではなかった。

「……やれやれ、困った人だ。」

『でも、好きなんですよね？』

「分かっていることを聞かないでください……まるでジェイドですよ。」

『ジェイドと一緒だなんて、微妙です。……そろそろ始業ですよ。』

「……ええ、そうですね。お気を付けて、無茶しないように。」

『お互い様でしょう？では。』

Aはアズールと別れた後も、耳まで真っ赤に染めた彼の後ろ姿を暫く見ていた。

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「………アジーム、大丈夫なのか。」

『ええ、心配されるようなことは微塵もございません。』

結局、始業のチャイムが鳴るまであの廊下でボーっとしていた。急いで教室に戻れば、クルーウェルにめちゃめちゃ心配された。以外にも、クラスメイトにも心配されたが。なんでも、４人が説明してくれたらしい。

助けてって言ってないじゃん……

それでも助けてくれた彼らに、ニヤつく顔を悟られぬよう、口を尖らせた。あんなこと言ってごめんな。ホントはお前らが大好きなんだよ。