笑わせないでよ【シルバー】 (ページ14)

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否定ページ14

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『……仲がいいんじゃなくて、付き合いが長いだけだから。』

教科書を机でトントンと整え、溜息を吐いた。

『もう、家族だとも思ってないよ。』

そうだ、きっと今までの違和感はこれだったんだ。あたしとシルバーたちの間に、絆が無かった。だから、『家族』って言われてモヤモヤしてたんだ。なーんだ、そんなことか。

一つ悩みが解消された気がした。なのに、スッキリしなかった。消えない胸のしこりに、モヤモヤしていた。

ポケットからミントキャンディーを出して、口に含んだ。フワッと鼻を擽るミントの香り。それと同時に思い出される記憶。

ペパーミントキャンディーを食べている時、自分の傍にはいつもシルバーがいた気がした。眠そうにしてるシルバーに、ユニーク魔法を使うのにも嫌気が差して、ミントキャンディを口に突っ込んだりしてた。そして、余ったものを自分で食べる。そんなことを始めたのがミドルスクールの頃だ。
あの頃は自分と背丈も変わらなくて、あどけなく笑う、シルバーの笑顔が好きだった。その笑顔が見られるから、ペパーミントキャンディーを好きになった。持ち歩くように、愛用する様に。シルバーが眠たくなったら、自分に頼るように。

馬鹿馬鹿しい。

嗅覚は自伝的記憶と直結している。その為、匂いで記憶を呼び起こすことがある。それは科学的に証明されている。要するに、今のはそれだ。思い出したくて思い出したわけではない。

『……もういらない。』

ペパーミントキャンディーに嫌気が差した。ガリガリ噛んで棒を捨てた。もう、二度と食べたくない。割と決断力はある方だと思う。これを又、飽き性とも言う。自分に関係ないものは、無関心。面倒ごとには無気力。

私って生き物は、そういうものじゃないか。

４人は心配そうにAを見た。

「……でも、前のAちゃんの方が、幸せそうだったよ。」

監督生が無気力な声でそう言った。本人はそんなつもりないんだろうが。

『……だからぁ、あたしにはどうにもできないんだってば。向こうに嫌われてるって言ってるでしょ？嫌われてて幸せなんて人いる？馬鹿にしてんの？嫌われたら、捨てられたら、それで終わり。』

机の上に教科書を放り投げ八つ当たりした。椅子に行儀悪く座り、宛ら取り立て屋のようだ。火に油を注ぐような監督生に、クラスメイトがひやひやしていた。しかし、彼はそんなことで黙るような子じゃない。度胸がある。

「……Aちゃんはどう思ってるの？」