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愛おしい光景 ページ12




「おやおや、アズールが人の料理を褒めるなんて……Aさんは料理がお上手なんですね。」

『あはは、ちょっと慣れてるだけ。』

「いえ、今すぐにでもラウンジで働いて欲しいくらいです。」

『大袈裟ですよ。ジェイドもいる?』

「おや、よろしいのでしょうか?」


逆に何でダメだと思ったのかが分からず、首を傾げる。


『フロイドにもアズールさんにもあげたし、久し振りに褒められて嬉しくなったし。』


ジェイドにも一品献上した。普段見えないギザギザの歯が見えて少しワクワクした。


「確かに、これは今すぐにでもアズールの実家で働いて欲しいくらいですよね?アズール。」

「お前はいちいち一言余計なんですよ。」

『ご実家って、海の中ですよね。……行ってみたいなあ。』


幼い頃の私は幻想を抱いていた。暗い暗い、闇に包まれる深海。それがどんなものか。ここに入学するまで私は海に行ったことすらなかった。初めて行ったのがオクタヴィネル寮なのだから。

本で読んだ物語の世界の海。それはあまりにもきらきらしていて信じれなかった。Aが思うに海とはもっと暗いのではないのか。暗闇を強制させられることのない世界で育ったAからすれば、海というものには好奇心しか湧かなかった。


「ですって、アズール。」

「連れてってあげたら〜?」

「お前たち、面白がっているでしょう。」


ころころと顔色を変えるアズールはかなり面白い。揶揄いたくなるのも分かる。すると、赤い顔のままでアズールさんはおずおずと聞いてきた。


「……Aさんは、先程のようなことを誰にでもするんですか?」

『先程、とは?』


「他人に料理を食べさせることですよ。」

「ジェイド…!」


なにか可笑しい?意味がよく分からず水筒のお茶を飲んだ。


『……しますけど。なんでしょうか。……まさか、距離が近かったりしますか?』


男女の距離感など分からない。仕方ない。茨の谷に同年代なんてシルバーとセベクしかいなかったのだから。このくらい毎日してた。父は「うむ、仲が良いのは良いことじゃ」とか言ってたし特段気にしたことは無い。しかし、その通りだったようだ。


『すいません、この学園へ来てからよく言われるんですけど、なかなか直せなくって……』

「いえ、気にしないでください。」

「そーそーオレとジェイドはそーゆーの気にしないしぃ。アズールは喜んでるから」

「フロイド!」


その光景を妙に愛おしく(懐かしく)感じた。

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作者名: | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur  
作成日時:2020年8月25日 20時

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