笑わせないでよ【シルバー】 (ページ2)

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なんで笑っていられるんだページ2

ジャミルside

Aが帰ってこない。

もう日が暮れてから随分経つ。今日は学園全体で天候が悪い。雷や雨の異常気象。放課後よりはずっとマシだが、さっきなんてオクタヴィネル寮のそばで大きな落雷があったらしい。こんなことが本当にあるのか？洗濯物を魔法で乾燥させながら疑問に思っていた。

カリムがAを探しに行ったっきり帰ってこないのも不安だ。それに、スカラビア寮に雨が降るなんてありえない。

制御がきかなくて勝手に天気変えちゃったりするけど
普段は普通に雨にしたり雷にしたり出来るよ?

『まさか……』

有り得ない、こんな短期間でAが情緒不安定になるなんて。しかし、それだと辻褄が合う。なら尚更の事心配だ。洗濯物を畳んでいた手を止め、スカラビアから出る準備をし、カリムに連絡した。

『おい、カリム！今どこにいる。』

「ああ、ジャミル。今スカラビア寮に帰ってきたとこだぞ。」

ふう、と安堵の溜息を吐いた。腐っても主人、腐ってもアジーム。嫌いな相手でも無事でないと困るのだ。

『Aはそっちにいるか？代われ。』

「いや、いない。そのかわり……」

は？見つかったから帰って来たんじゃないのか？スマホを睨んでいると自室の扉が開いた。嫌な予感がする時、いつも近くにいるのはカリムかこいつらだ。

「お邪魔していますよ、ジャミルさん。」

「ウミヘビくん、やっほ～。」

「ジェイドとフロイドが来たんだ！Aの居場所を知っているらしい！」

不安要素しかないじゃないか。その二人……オクタヴィネルが関わってきたら、ろくなことがない。だが、A絡みだ。いつまでも扉の前にいる双子に声をかけた。

『……それで、Aは？』

要件だけ訊くと、ジェイドはにっこりと笑った。

「もう彼女はここへは帰ってきませんよ。」

「イルカちゃん、オクタヴィネルに転寮したんだ～」

カリムが目を見開いた。きっと自分も同じような間抜けな顔をしている。意味が分からない。なんでオクタヴィネルなんだ。もしかしたら、不当な契約で連れていかれているのかもしれない。でなければオクタヴィネル寮など選ぶはずがない。
信じられないという顔をするジャミルに対し、カリムは笑った。

「Aにも、頼れるところが出来たんだな！出来ればオレを頼って欲しかったけど、オレなんかよりお前らの方がずっと頼りがいがあるもんな！」

お前はなんで笑っていられるんだ。