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記憶と対面 ページ25



ナイトレイブンカレッジ────通称 NRC。ツイステッドワンダーランドきっての魔法士養成学校。現在、賢者の島に位置しており数々の有名魔法士を排出している。


『しかしもれなく全員血気盛んである、だよね……』


大小の砂利を踏んで揺れる馬車。秋の訪れを告げる柔らかい光が窓から漏れる。車内に一人で座る少女の手には分厚い資料が握られていた。お下がりの少ししなびたブラウスとは対照に、少女は雛鳥のような鋭く澄んだ目をしている。その目の見据える先は資料ではなく、暗雲を過ぎるように不吉で険しい山と谷を越えた地、ナイトレイブンカレッジだった。

クロウリーの訪問から数ヶ月が過ぎ、夏が明け、マレウスやリリアに続いてシルバーもNRCへ入学した。学校見学や体験入学などの話も進み、晴れて本日、NRCへ見学に訪れたのだ。ここに至るまで本当に長く長く面倒で面倒だった。
まずはマレウスとリリアへの報告、そして話し合い。更に谷から出たい意思を告げ説得。ようやく認められたと思えば今度は元老院への説得────正直一番長かったのがこれである────と女王陛下への報告。ここで一段落と思えば、次は学園からの多くの書類と資料。茨の谷は電子機器が普及していないので全て手書き。更にクロウリーとの話し合いの末、やっとのことでこの校内見学に漕ぎ着けた。これには本当にAの血の滲むような努力があるのだ。
思い出しただけでどっと疲れたような表情になる。体力的な疲れは睡眠を取れば回復するAだが、精神的なものは蓄積するとなかなか晴れないのだ。

ガタン、と突然馬車が足を止めた。扉が開き、Aは馭者の手を取り車両から降りた。久しぶりに降り立つ茨の谷以外の土地にAは少し不思議な気持ちになった。期待と不安で複雑な心境の中、キョロキョロと辺りを見渡していると、正面から教員と思わしき男性がこちらへ歩み寄ってきた。
ハイセンスなファーの上着に、全体を白と黒で統一したファッション。締め色のワインレッドが綺麗に引き立っている。綺麗な長い脚でモデルのように歩く彼からは、大いなる自信と美を感じる。まるで高貴な大型犬でも腹のうちで飼っているようだ。



『はじめまして。Aと申します』

「ようこそナイトレイブンカレッジへ、A」

彼はデイヴィス・クルーウェルと名乗った。もちろん名前は知っていたが、顔を見たのは初めてだ。想像より耽美な顔立ちにAは少し照れてしまった。

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作者名: | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur  
作成日時:2021年7月21日 20時

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