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記憶と決意 ページ24



「少し長居しすぎてしまいましたねぇ。今日のところは暇させていただきましょう。詳しい話は後日連絡しますよ」

『はい。わざわざ遠くまでありがとうございます』

クロウリーを城の外まで案内することになった。道中も相変わらず痛いほどの視線を感じたが、まあ見られても仕方がないとは思っている。城下町まで行けば騒ぎが大きくなるから城の外までで良いとクロウリーから告げられ、3人で最初に来た道を戻って行った。Aは最後にクロウリーに訊ねた。

『マレウス様と、リリア様はお元気でしょうか……』

シルバーはこっちに顔を向けただけで、何も言わなかった。何も言わないし、表情を変えるわけでもなかった。クロウリーはその時初めて微笑んで言った。

「ええ、少し元気すぎるくらい」

そう一言だけ言ってから、彼はマントを翻して姿を消した。現れたのも消えるのも一瞬で儚い男だと思った。Aは「戻ろっか」と声をかけて足を反対側へ向けた。しかし、シルバーに片腕を取られ、それ以上進むことはなかった。彼にも動こうとする気配はなかった。

「……ああは言っていたが、もう自分の中では決まってるんじゃないのか」

いつにも増して真剣な眼差しが、Aの本心に刺さった。そりゃあ、ずっと親父殿のおんぶにだっこにって訳にはいかないし、自分の意思くらいはある。しかし今言うつもりはなかった。親父殿とちゃんと話し合うつもりだったのだ。シルバーからの突然の問いに、少し戸惑った。

『私は、入学したいと思ってる、よ』

どんどん語尾が自信をなくしていく。一世一代の告白と言っても過言では無い。何せ今まで”茨の谷から出たい”と同義の言葉は避けて生きてきたのだから。
Aはシルバーの手を両手で握り返し、ギュッと握りしめた。

『シルバー、合格おめでとう』

「ああ。ありがとう」

『学園長が言ってた通り、きっと私はシルバーより歳下なんだと思う。私はそんなこと知らなかった。そういう、知らなかった自分を知る為にも……茨の谷以外のことを学ぶ為にも、外から見た谷の現状を知る為にも、谷を出てあの島で勉強がしたい』

思いの強さは届いているだろうか。自分なりに頑張って自分の気持ちを打ち明けた。否定されるかもなんて考えもしなかった。あたたかい彼の手を心惜しくも手離し、自分の左胸を強く叩いた。


『絶対追いつくから、先に待ってて』

「ああ、信じて待ってる」



花が咲いたように笑う彼の背を、追いかけることに決めたのだ。

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作者名: | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur  
作成日時:2021年7月21日 20時

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