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記憶と歓迎 ページ23



『……今は父が不在であり決断を出すことはできません。持ち帰り検討させていただくことにします』

「ええ、それが正しいでしょう」

Aは「ですが、」と何だか気まずそうに付け足した。「ですが、私が入学して学園側に利益は生じるのでしょうか?」と。シルバーは呆れたように肩を小さくすくめ、またか、とでもいいたそうに視線を逸らした。

『NRCは男子校ですし、全寮制です。女子である私が入学しては、色々と面倒なのでは?』

「ええ、かなり面倒ですよ」

『では何故……』

彼は「闇の鏡に導かれし魔法士の卵は全員NRCに入学する権利がある」と不服そうに説明した。どうやら彼もあまり乗り気ではないようだ。今までの会話からくみ取ってもかなりの面倒臭がりで放任主義ということは分かったし、彼が谷まで来たのはやはり自分の意思ではないようだ。
Aがじゃあ入学しない方が良いのでは?とでも言いたげに首を傾げるので、クロウリーは慌てて付け足した。

「しかし、君は闇の鏡に選ばれた者達の中では……いえ、学園内でもトップを張れるほどの実力があります。このような優秀な生徒をみすみす逃すなんてこと、私にはできません!」

『は、はあ……』

何だかよく分からないが、嫌という訳でもないようだ。学校の面子の為というよりは、面倒よりも学校に優秀な生徒を入学させたいという気持ちの方が強かったということだ。

「勿論、他の生徒と同じように扱う訳にはいけませんので、それなりに差別化した処遇にはなりますけどねぇ」

『何から何まですいません……』

Aがしっかりと頭を下げると、クロウリーはゴホンと咳をついて話題を変えた。隣で空気になっているシルバーをちらりと覗くと、興味があるのかないのか、さっきまでの焦りはどこへやら、勢いを失っている。

「まあ、君と話が出来て良かったです。下手すれば追い出されそうなくらい歓迎されませんでしたからねぇ」

『城の者がすいません。代わりに謝罪します』

「俺の方からも、申し訳ない」

大人の不敬をまだ幼い自分達が謝るのも何だか失礼に当たりそうだが。彼は「君はもしかして、茨の谷の出身ではないのですか?」と問われた。図星、というよりは驚愕で目を丸くした。

「茨の谷は殆どが妖精族であるが故に少数派のヒト族である人間を貶めるという因習が未だ色濃く残っていますからねぇ」

流石は教育機関のトップ、歴史の知識も豊富だ。ちょっと嫌な感じだ。

皮肉にも、その通りなのだから。

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作者名: | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/_sora_fleur  
作成日時:2021年7月21日 20時

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