溺れないでよ【シルバー】 (ページ22)

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記憶と衝撃ページ22

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『あっ、あたしが闇の鏡に！？』

｢ええ、シルバーくんも一緒ですよ｣

『いやそんな、ええ……』

なるほど谷中が騒いでいる訳だ。Aはちょっとずつ何が起きたかを思い出してきた。そういえばそんなこともあったな、なんて今では軽く流せられるけど。それでも、これは谷にとって、いや、ナイトレイブンカレッジにとっても前代未聞の出来事だった。
クロウリーはナイトレイブンカレッジについて詳しく話をするとのことなので、奥の客室に通した。もう何年も誰も呼んでいない(それ以前に、Aが物心ついた時からこの部屋を使っているところは掃除以外で見たことがない)ので、かなり質素になっている。普段ならお茶を入れる係なのだが、客人の目的が私の為に他の者が用意しているのでなかなか落ち着かない。

｢それでですね、君には少しいきなりすぎると思いまして｣

『ええ、かなり』

｢検討する時間を設けることにしましたよ｣

私、優しいので。と自賛しているが、当然の措置ではなかろうか。はあ、と溜息に近い相槌を打った。Aはその検討できる期間を訊ねた。

｢1年設けましょう｣

『い、1年！？』

｢ええ、途中編入なんてことになったら尚更ややこしい……いえいえ、君がついていけないでしょうし｣

なんというか、この人の言葉は微妙に神経を逆撫でるようだ。言葉の節々に本音が見え隠れしている。学校でもこんな感じなのかと思ったら、ちょっと入学は拒否したいところだ。
Aはどうしたらいいのか決められなかった。親父殿が不在の今、自分でこの話を決めて良いのか。そもそもNRCは男子校である。今隣にいるのはシルバーだけで、大した助けにはならない。
Aが困ってう〜んと唸っていると、クロウリーはまた驚愕の言葉を口にする。

｢そもそも君は年齢的に来年入学のはずなんですけどねぇ｣

どういうことなのか数秒理解ができなかった。しかし良く考えれば、自分の出生は不明で正しい年齢も何も分からない。自分の名前も小さい頃に一人称が”A”だっただけで、それが本名なのか愛称なのかすら不明なのだ。Aは再度問うた。

『私は、ずっとシルバーと同じ年齢だと思っていたのですが……』

｢はい？シルバーくんと君は1学年違いますよ｣

その言葉を聞いた時に、なんだかどっと疲れが押し寄せた。次々に押し寄せる情報の波に身を任せているしかなかった。今まで信じてきた事実が変わってしまったことに、大きな衝撃を受けた。